本レシピのポイント
・完全無添加でありながらも長期保存可能。
・ただの紅生姜よりも美味しく、古生姜で作れる。
・甘酢生姜は旨味を増やし、長期保存可能。
西の紅生姜、東の甘酢生姜
日本では生姜を長持ちさせる為に、様々な地方で酢で漬け込んだ保存食/漬物があり、東では甘酢生姜、西では梅酢に漬け込まれた紅生姜が根付いたとされています。
紅生姜は手軽に作れるにも関わらず、パック詰めのものよりも遥かに美味しいものを作ることが出来ます。
甘酢漬けはマイルドかつ旨味が多く、ジャキジャキとした歯ごたえが楽しい上に、爽やかな味は口の中をサッパリとさせてくれます。
最初に紅生姜について、次に甘酢生姜について触れていきますが、甘酢生姜の事だけ知りたい人はコチラをタップorクリックしてください。
レシピだけを紅生姜のレシピだけを知りたい人はコチラをタップorクリック、甘酢生姜のレシピだけを知りたい人はコチラをタップorクリックしてください。
チェーン店と市販品の紅生姜
吉野家の紅生姜は野菜由来の着色料を使用していますが、牛丼に合わせて作っていることから塩分を若干控えめにし、酸味料と旨味調味料を加える事で味のバランスを取っています。
ただし、伝統的な製法で使う梅酢を使用している為、美味しいと感じる人は少なくないでしょう。
コンビニやスーパーなどで安く売っており、焼きそばやお好み焼きなどに使われる紅生姜には着色料と旨味調味料、酸味料が使われている事が多いです。
中国やタイなどの生姜がかなり安い為、輸入品で作ることが多いですが、【鮮度/扱いが悪くなければ国産品と比べて味が極端に落ちる】という事はあまりありません。
本来の紅生姜の作り方
古生姜を塩漬けして脱水させ、乾燥した後に梅酢(梅干しを作った時に出るエキス)に漬け込むだけのシンプルな製造方法です。
新生姜を使うとカビが生えやすい為、スライスしてから乾燥させますが、風味が弱い上に手間が掛かるので柔らかい食感が欲しい時のみしか使用しません。
この梅酢に赤紫蘇が入っていれば天然の着色料となりますが、紅大根や赤キャベツから抽出した色素で染めるメーカーもあります。
上記の広告画像は合成着色料を使用している様に見えるかも知れませんが、赤紫蘇だけでこれだけ濃い色合いにすることが可能です。
紅生姜の切り方は2種類
古生姜を丸ごと調味液に作る方法もありますが、時間が掛かるので今の時代ではカットしてから調味液に漬け込みます。
馴染みがあるのが千切りにして作った千切り紅生姜だと思いますが、薄くスライスして作った平切り紅生姜もあります。
平切り紅生姜は古生姜で作るとハードな歯ごたえとなる為、新生姜で作る事が多いですね。
紅生姜の色合いの特徴
▲上記広告画像は合成着色料を使用したもの。
幾らでも色合いを濃くする事は簡単に出来ますが、野菜に含まれる色素で色を付けた場合には水に触れると色が抜けやすいという弱点があります。
天然色素以外では合成着色料の赤色〇〇号を使いますが、色落ちしにくいメリットがある為、ラーメンのスープに紅生姜の色が移らない様にする為には最適です。
ただし、赤紫蘇と梅酢を使った紅生姜と比べると風味が2段階程落ち、発酵食品にたっぷりと入っている自然な旨味が無い為、味の面では大幅に劣ります。
紅生姜の調味液について
おおまかに分類にすると以下の様になります。
①格安 クエン酸or酢+塩+着色料+旨味調味料(味の素など)
②標準 赤梅酢(紅梅酢)+塩
③高級 高塩分梅酢+赤紫蘇
梅酢には色が付いていない白梅酢と赤紫蘇を使った赤梅酢の2種類があり、塩分濃度が10~20%までメーカーによって様々です。
何故、高塩分の梅酢で作るものが高級としているかと言うと、塩をたっぷり使った梅干しの方が梅の果汁が多く抽出されている上に、長期熟成させた物が多く、赤紫蘇のコストも掛かっているからです。
なので、梅酢の購入時にはパッケージの原材料に塩分濃度が18~20%当たりのものを買うことをオススメします。
小話:赤紫蘇を色々使おう
赤紫蘇に関しては梅干し作りのシーズンである5~6月前後になると1袋300円前後で販売されます。
100円ショップで買った赤紫蘇の種(2袋で100円)を適当な土に埋めて、水さえ与えれば勝手に大きくなってきますし、穂紫蘇が出来てから放置すれば来年も勝手に芽吹いてくれます。
簡単にプランターで育つのは青紫蘇と一緒であり、紫蘇ジュースや漬物などを作るのに重宝します。
▼自家製赤紫蘇調味料。
赤紫蘇に含まれているアントシアニンというポリフェノール(野菜色素)は酸性に傾けば赤色に、アルカリ性になれば青色に変色させられます(ブルーベリーと一緒)。
収穫した赤紫蘇を砂糖漬けや塩漬け、梅酢漬けなどにしておけば通年使うことが出来るので無駄は一切出ません。
砂糖漬けの場合にはリンゴ酢を使う事でまろやかな味わいと色鮮やかな色を発色させ、赤かぶ漬けやサクラ大根などの甘い漬物を手軽に作れます。
美味しい紅生姜のレシピ
材料
古生姜(皮を剥き、千切り)適量
梅酢 適量
水 適量
生の赤紫蘇(塩漬け可) 数枚
殺菌した容器
究極の紅生姜のレシピと言いながら非常にいい加減なレシピなのには訳があり、【梅酢の塩分濃度・赤紫蘇の状態・好みの塩加減】で全く異なるからですね(笑)。
といっても、おおまかな目安としては実験済みであり、梅酢の塩分濃度は3種類もあれば好みの味わいになるはずです。
調味液の塩分濃度比率
減塩 梅酢に水を加えて、塩分濃度5%
標準 梅酢に水を加えて、塩分濃度10%
通好み 梅酢をそのまま使う
ポイント
塩分濃度が5%を超える保存食は大概の菌を殺菌してくれるので、理屈で言えば永遠に腐ることはありませんが、塩分濃度が5%前後の場合には生姜から出る水分で薄まることを念頭に置いておきましょう。
なので、減塩仕様の紅焼だけは冷蔵庫で保存しながら3ヶ月を目安に食べる切ることを勧めます。
▼剥いた皮は冷凍して臭み消し用に。
※画像用意中。
美味しい紅生姜を作るコツは2つあり、皮はしっかりと剥くことで歯ごたえをより良く出来、見た目も美しく仕上がります。
もう1つは針生姜ほど細くすると歯ごたえが寂しいので、ある程度太く作ることでしょう(売っている紅生姜のサイズを実際に目で確認すると良い)。
生姜の皮には一番香りがあると言われているので、煮魚や角煮、ブイヨンなどを作る時に使いましょう。
▼調味液を生姜が浸かる程度注ぐ。
減塩はやや物足りない味わいですが、市販されている紅生姜の塩分濃度に近く、食べやすいですが、単品で食べて美味しいほどの美味しさはありません。
オススメは標準の濃度であり、紅生姜をご飯に載せるだけでも非常に美味しい程の旨味と風味を持っています。
通好み...昔ながらの漬物や発酵食品が好きな人には堪らない味わいであり、酸味・風味・旨味、全てにおいて最大級であり、梅の香りが非常に豊かですが、高塩分なので食べ過ぎ注意。
▼赤紫蘇を入れる。
上記の写真は赤紫蘇を液体の中に入れて1日静置したものですが、全然色合いが違うことが確認できるはずです。
なので、赤紫蘇を入れたら良くかき混ぜる事で、まんべんなく赤色に染めることが可能となります。
紅生姜の色合いも好みがあるので好きなだけ入れてもいいですが、小さめの古生姜1パックに対して1枚ぐらいで十分でしょう。
▼完成品。
熟成期間はある程度長い方が美味しくなりますが、2日ぐらいで相当美味しく仕上がってくれますね。
古生姜の強い刺激と梅酢の塩気が合わさっただけなのですが、これが不思議と美味いのが和食の面白い所ですね
紅生姜の調味液は肉や魚などの臭み消し、梅酢と同じ様な使い方が可能なので、捨てずに保存しておきましょう(焼酎で割って呑む人も居ます)。
時間が経つと白く濁る事がありますが、生姜に含まれているデンプン質なので問題はありません(生姜の絞り汁を静置していると同じ現象が起きる)。
▼鶏白湯や豚骨スープなどと良く合う。
定番のラーメンや親子丼、牛丼などに使うと紅生姜は単なる薬味では無く、主役級のトッピングに感じるはずです。
ただし、チェーン店の牛丼の如く、紅生姜をドッサリとトッピングすると塩分の高さと旨味に料理が負ける可能性があるので載せすぎ注意。
▼粉ものにも最適。
お好み焼きやたこ焼き様の刻んである紅生姜は非常に高価ですが、手作りの紅生姜をみじん切りにして使用することで圧倒的なローコストを実現可能。
風味と旨味も豊かな為、味のメリハリも付き、ワンランク上の味わいに仕上がります。
次の項目から甘酢生姜についての話になります。
チェーン店と市販品の甘酢生姜
市販されている安いものやパック寿司に入っている個別包装の甘酢生姜は食品添加物の漂白剤でキレイな白色にした後に、淡いピンク色に着色します。
漂白した生姜を無着色のまま甘酢生姜にしたものが白ガリと呼ばれており、一番安い甘酢生姜となっています。
漂白した甘酢生姜が不味い理由ですが、薄く切った生姜を漂白し、漂白剤を完璧に取り除く為に、たっぷりの流水に晒すからでしょう。
その結果、素材の味が薄くなる為、様々な調味料や旨味調味料を加えて味を整えています。
本来の甘酢生姜の作り方
新生姜を塩漬けして脱水(乾燥)させた後に甘酢に漬け込むのが基本ですが、昔の寿司屋では古生姜を使う店も珍しくありませんでした(流通の問題だと思われます)。
古生姜で作ると歯ごたえと辛味が強く仕上がり、新生姜で作ると柔らかな食感と穏やかな風味が楽しめ、色もキレイに仕上がります。
甘酢生姜の切り方は2種類
スライスするのは一緒ですが、薄めにして柔らかな食感である寿司の付け合せとして利用するか、やや厚めにして生姜自体を楽しむかの2種類の切り方があります。
寿司屋ならば絶対に薄く切る、甘酢平切り生姜を選びますが、家庭で味わう分にはどちらでも構いません。
市販品や通販ではほとんどが薄いタイプなので、本記事では厚いものを作っていきます。
例外としてはじかみという新生姜の中でも小さいものを軸ごと漬け込んだものも甘酢生姜の1つとなります。
こちらは切らずに、はじかみ生姜に付着している汚れを取り除き、本レシピで紹介している調味液に漬ければ作ることが出来ます。
甘酢生姜の色合いの特徴
左から古生姜の甘酢漬け、古生姜の甘酢漬けにミョウガを入れたもの、新生姜の甘酢漬けとなっています。
新生姜にはアントシアニンが含まれていますが、古生姜にはアントシアニンがほとんどなくなってしまう為、同じ生姜と言えども色合いは全然違います。
▼甘酢生姜の汁の色合い。
先程と同様の順番にしており、右になるほど色が濃くなっています。
古生姜を色鮮やかにするには何かしらの着色料が必要となる事が明らかですね。
▼ミョウガを半割にし、入れるだけで十分。
赤紫蘇を使ってもいいですが、淡い色合いに寄せるならばミョウガぐらいが丁度良いでしょう。
美味しい甘酢生姜のレシピ
材料
新生姜 適量
調味液の割合
米酢 200cc
白砂糖 60g
塩 小さじ1
あらゆる甘酢生姜のレシピはこれぐらいシンプルで十分ですが、その代わり、【美味しい米酢を使う】所だけは守りましょう。
安い醸造酢を使った場合には旨味が足りず、カドがある味わいと鼻にツンッと来るので、甘酢生姜の調味液を他の料理に使う事がためらわれます。
新生姜の調味液は生姜がしっかりと浸かるぐらいに用意しましょう(理由は後述)。
▼薄すぎず、厚すぎずに切る。
新生姜の場合は皮を剥く必要は無く、むしろ、皮に含まれている赤色の部分を除去してしまうと色鮮やかに仕上がりません。
又、繊維に沿って切るのでは無く、繊維を断つ様に切る事で歯切れが良い甘酢生姜になります。
生姜の形は均一では無いので部位によっては繊維に沿って切る事もあります(大きさは揃える)。
▼沸騰した湯に入れて殺菌消毒。
新生姜を扱う際の注意点としてカットした時点から色が徐々に褐変してしまう事でしょう。
なので、生姜を切る前に熱湯を用意しておくのが美しく仕上げるポイントです。
そのまま甘酢に漬けるレシピを公開している人も居ますが、【生姜には殺菌作用は一切なく、むしろ、菌にとっては繁殖しやすい】ので、加熱作業は必須となっています。
なので、素材の風味を若干損ねても保存性を高める為に、強火で沸騰した湯に入れて、再沸騰させるぐらいまで加熱すると安心して1年以上保存できます。
▼酢を加熱させると旨味が増す。
調味液は軽く沸く程度に加熱すると酸味が飛び、まろやかになる上に、アミノ酸が増えるので旨味が増えます。
一方、砂糖と塩が溶ける程度に加熱した場合には酸味が強く、後味がサッパリと仕上がります。
よくある勘違いその2になりますが、【酢には殺菌作用が無く、抗菌作用、つまり、菌の増殖を抑える効果】しかありません。
なので、【酢を使った調味液に浸かっていない部分がある場合にはカビが生えたり、腐る事があるので、たっぷりの調味液が必要】なのです。
複数の器に保存しても良い
一気に食べきる自信がない場合には殺菌した容器を2つ以上用意し、分けて保存する事で長持ちさせる事が可能です。
新生姜は春と秋に1度ずつ旬がある為、2つぐらいの容器に分け、1つの容器を3ヶ月を目安に消費しきれば安全かつ鮮度の良いものを通年楽しめます。
▼完成品。
うっすらとピンク色に染まり、やや厚みのある甘酢生姜はシャキシャキとした歯ごたえと新生姜特有の爽やかな風味が楽しめます。
古生姜で作った場合には歯ごたえがより強く仕上がるので、新生姜の時の1/3ぐらいの厚さじゃないと口に当たってしまう事は押さえておいてください。
ちなみに、美食家で有名だった芸術家「魯山人」は寿司屋で古生姜の甘酢生姜じゃないと怒る面倒な客でしたが、昔の魚は鮮度がイマイチだった為、臭み消し効果が強い古生姜の甘酢生姜を好んだのかもしれませんね。
しかし、食品の流通改善が進んだ現代では新生姜の方が魚の味を損ねず、美味しく食べられると管理人は考えています。
▼手軽に酢の物を作れる。
生姜の旨味が染み込んだ甘酢生姜の調味液に加熱していない米酢と塩を少々加えれば、簡単に酢の物を作ることが出来ます。
生姜の爽やかな風味がほのかに酢の物に加わると、単純な料理でも一手間掛けたプロの味わいを手軽に再現することが可能なので、一滴も無駄になりません。
▼酢を使う料理ならば大抵使える。
酢の物の時と同じ様に、米酢と塩を少々加えて味を濃くし、昆布を加えれば酢飯や光り物を〆るのにも利用できます。
まとめ
様々な国で活躍する生姜ですが、旨味がたっぷりとある米で作った酢が日本にあるからこそ、紅生姜と甘酢生姜は生まれました。
しかし、格安品が多く出回るにつれ、両方とも単なる添え物と見られがちになってからは、美味しいものである事を知らない人が増えました。
実際に作ってみるまでは手間が掛かる印象が強いかもしれませんが、意外と楽に作れる漬物であり、材料も揃いやすいので是非、1度は試してみてください。