このレシピのポイント
・高い上に使いにくい白板昆布の代わりにおぼろ(とろろ)昆布を使う。
・ちょっとした下処理でプロの仕事に近づける。
・仕上げに炙ることで香りをかなり向上出来る。
押し寿司とレシピについて
押し寿司の存在を知らない人はほぼ居ないと思いますが、家庭で作る人は少数派であり、出来合いのものを買う人が多数でしょう。
しかし、自分で作ることが出来れば酢飯の味加減や鯖以外にも様々な魚が使うことが出来ます。
押し寿司で有名なものというと京都の鯖の棒寿司や大阪のバッテラ、富山の鱒寿司、鯵の押し寿司などがありますが、今回は鯛の刺し身でも皮が美味しく食べられる押し寿司に加えて、和食の紙塩という調理技法を交えて紹介します。
昆布締めが面倒なので…
押し寿司では何かで包むことが多く、昆布や笹などの香りと旨味を持った素材が使われることがよくあります。
鯖の押し寿司を例に挙げると白板昆布という透明感のある昆布を使ったものがありますが、白板昆布は家庭ではほぼ扱わない素材であり、高級品です。
しかし、昆布締めは具合が中々難しいものであり、『昆布のとろみや匂いが着きすぎた』『昆布が水気を吸いすぎて切り身が硬くなる』『そもそも昆布締めが面倒』などの意見を聞いたことがあります。
それらの事象を簡単に解決できる案が無いかと考えていた所、おとりよせで昆布のことを調べている内に閃いたのがおぼろ昆布を使うことでした。
出来れば味が均等に馴染みやすいおぼろ昆布が良いのですが、家庭ではとろろ昆布の方がまだ購入しやすいという理由からタイトルではとろろ昆布と銘打っています。
とろろ昆布とおぼろ昆布の違い
とろろ昆布は昆布を酢に漬けて柔らかくしてからブロック状に固め、その断面を薄く糸状に削り取ったものです。
おぼろ昆布は逆に糸状ではなく、昆布の表面を職人がカンナの様なもので1枚ずつ帯状にけずったものです。
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実食レシピ/良質な黒と白とろろ「富山のこんぶ7種類/源蔵屋」
・白いとろろだけではなく、黒いとろろも手に入る。
・比較的リーズナブルに上質なおぼろ昆布が手に入る。
・7種類ある海藻商品の内3つ選べる。続きを見る
今回使用したおぼろ昆布は上記の記事で紹介している製品です。
材料
米 1合(150g)
水 適量(やや硬めに)
A(寿司酢)
米酢 大さじ3
砂糖 大さじ2
塩 小さじ1
小さめの鯛 1尾
※大きい場合には押す時にカットして調整。
塩 適量
B(酢じめ用調味料)
米酢 大さじ2
砂糖 大さじ1
鯛の皮を食べやすくするには軽く火を通せば良いわけですが、松皮造りと直火で炙る方法があります。
松皮造りは今回の調理方法に適していないので直火一択になる訳なので、ガスコンロかバーナーが必須です。
作り方
1.Aの調味料を混ぜ、砂糖が溶ける程度に加熱する。
2.ご飯を硬めに炊き、先程の調味料と合わせて冷ます。
3.鯛を3枚におろし、皮と骨を取らずにおいておく。
腹骨だけはすき取ります。
4.バットに振り塩をし、キッチンペーパーで巻いた鯛を置く。
5.キッチンペーパーの上から塩を振る。
差が付く下処理方法「紙塩」
紙塩という言葉を聞いたことがない人が大半だと思いますが、この技法は魚や貝などの身を和紙に挟み、霧吹きで軽く濡らしてから塩を軽く振ることで均一に下味を行える和食のテクニックです。
出来れば良い和紙(奉書紙)が良いのですが家庭ではもったいないのでキッチンペーパーで代用しますが、若干厚みがあるのでやや多めに塩を振っても大丈夫です。
最近では100円ショップで販売している天ぷら用の和紙が50枚以上入っているので、そちらを利用するのも良いかもしれませんね。
塩味を効かせる為というよりは旨味を引き出しながら臭みを抜く技法であり、この作業を行うとプロの味にグッと近づきます。
6.20分経ったらキッチンペーパーを取る。
寝かせる時間は長い方がより味が良くなりますが、今回は最低限の時間で仕上げていきます。
7.新しいキッチンペーパーを巻き、Bの調味料をかける。
8.20分経ったら鯛の中骨をピンセット/骨抜きで取り除く。
ポイント
小柄の鯛でも酢でしめる抜きやすくなります。
鯛が大きい場合は中骨の部分を包丁で切り落とした方が無難でしょう。
9.押し寿司器にラップを敷き、鯛・おぼろ昆布の順に乗せる。
ここでキレイにおぼろ昆布を敷くことでギリギリわかる程度の昆布の旨味がご飯と鯛に入ってくれます。
10.酢飯をキレイに載せたら、ラップで包む。
11.押し寿司器でしっかりと押してから重しを乗せる。
12.30分ほど置いたらラップから取り出す。
時間はどれぐらい必要か実験したことありませんが、全く時間をかけないととても崩れやすいです。
13.炙って切ったら完成!
正直な所、かなりマニアックな調理方法であり、こんなレシピ家庭で再現する人ほぼ居ないでしょう(笑)。
ですが、シンプルな調味料にも関わらず、和食の技法をフルに活かすとここまで美味しくなるとは驚くはずです。
昆布締めと違い、昆布の臭みも少なく、粘り気も無い為、鯛の美味しいところを余すこと無く楽しめます。
面倒なレシピを紹介しましたが、この記事で一番大事なのは『昆布締めや白板昆布じゃなくともおぼろ昆布でも美味しくなる』ということだけ抑えてください。