セールスポイント
・魚醤に漬け込んだするめいかを丸ごと干したもの。
・イカを使った魚醤「いしり」がイカの旨味を倍増。
・ワタが入っているので非常にコクがある。
もみいか/丸干しイカについて
「もみいか」とはスルメイカの丸干しのことですが、一般的に食べられている乾物の「あたりめ」と違い、石川県能登ではイカの肝が入っており、「丸干しイカ」とも言われます。
やや小ぶりのスルメイカを塩漬けにした後、干す前にイカを手で揉むことで、中のワタをイカの中に染み渡らせることで独特のコクを引き出します。
又、完璧に水分を飛ばしていないので保存性はやや落ちますが、ムッチリとした歯応えがありながらも、歯に優しくなっています。
「もみいか」はおおよそ2つの種類に分けられており、『塩を使ったタイプ』と『いしりと塩を使ったタイプ』が製造されており、今回は後者の方を紹介します。
本記事では乾物のスルメのことをあたりめと表記
いしり(いしる)について
魚介類に塩を加えてから年単位で漬け込んだものが魚醤であり、石川県の奥能登で作られるものはイカを使っています。
これが「いしり」なのですが、イワシやサバ、アジなどを使った魚醤も「いしり」であるのが少々面倒な所です。
本記事で大事なことは『イカにイカの魚醤を使う、同じ素材であること以上の相性が他にはない』ということを伝えたいポイントとなっています。
手作りのイカの塩辛を作る時に隠し味にイカのいしりを使うと、得も言われぬ旨味と香りが加わり、発酵食品の底力を知ることが出来ます。
レビュー
今回紹介するのは「西海水産」の「もみいか」です。
▼取り出したもみいか。
パッケージで確認するのが一番手っ取り早いですが、注文時に原材料に注目することでいしりを使っているかどうかが簡単に確認できます。
「西海水産」の「もみいか」は味が染み込み、柔らかく仕上がる様に食塩と砂糖、いしりで作った調味液に漬け込みます。
その後、あらかた水分を抜いてから揉み、手作業にて丁寧に干しています。
食べ方の基本
1.丸干しイカを酒か水に10~15分漬ける。
2.オーブントースターやグリルなどを予熱。
3.水気をサッと拭き取り、2~3分焼く。
焼きすぎるとかなり固くなり、焦げ目が付いてしまうので軽く温める程度ぐらいで良いでしょう。
個人的には1の作業は省くことで、素材の味が水分に取られない分、美味しく感じました。
ただし、干しするめよりも柔らかいとは言え、少々歯応えは強くなる欠点もあるので、どちらが好きか試してみるのが良いと思います。
▼3つにカット。
いしりが使われているので封を切った時点であたりめよりも強い香りが楽しめ、炙ることで部屋中に匂いが充満するほどです(笑)。
ただし、塩分に関してはあたりめよりもかなり強いのでそこは人を選ぶかもしれません。
本来は5~10mmぐらいの幅に切ってから食べるものですが、下足・胴体・エンペラとどの部位も手で千切るのが簡単なぐらいには水分が残っています。
下足とエンペラは水分が少ないので、比較的市販品のあたりめに近い食感ですが、つけ汁が1番しみている部位なので、それだけでもコクが違いますね。
▼胴の部分には肝がある。
胴体付近はムチッとした弾力と程よい歯応えが楽しめる部位であり、柔らかく仕上がるので力を込めずとも食べることが出来ます。
「もみいか」の主役である魚醤が染みた肝は苦味はほぼなく、旨味の爆弾といっても過言ではないぐらいにコクがあり、病みつきになるとペロリと食べてしまいますね。
この爆弾と一緒に身を味わうと…ケンサキイカのイカソーメンやアオリイカの天ぷらなどに並ぶ立派な料理/おつまみに変貌します。
噛めば噛むほど口の中で肝と身が程よく混じり、イカの美味しさの全てを堪能することが出来ました。
もみいかの松前漬け
材料
好みの昆布 適量(細切り)
もみいか 適量(中骨を取り、細めの短冊切り)
かずのこ(合っても無くとも)
調味液(加熱させず混ぜるだけ)
濃口醤油 大さじ1
日本酒 大さじ2
本味醂 大さじ2
仕上がるまでの期間は2,3週間前後といったところであり、発酵食品ではないですが、可能な限り毎日1回混ぜると味の馴染みと風味がよくなります。
味付けのポイントは通常の松前漬けよりもグッと塩分を減らさないとかなり強い塩分になってしまうので、松前漬けのタレよりも濃口醤油を半量にしています。
…それはそれで、酒飲みには喜ばれるとも言える美味しさがありますが、最近はマイルド嗜好の塩蔵品が増えたので、塩辛い塩干物に縁がない人は醤油を少なめにしましょう。
仕上がるとイカの肝が効いた松前漬けになり、いしりの旨味が加わることで松前漬けとは思えないほどに濃厚な旨味になります。
つけ汁が少々濁る欠点がありますが、ご飯に載せても美味しいおかずにもなり、日本酒と焼酎に毎晩お世話になるほど相性が良いですね。
総評
あたりめと比較して紹介していますが、あちらはかなりカチカチになった乾物であり、こちらは水分が多く残っているので本来は比較出来ないかもしれません。
しかし、普通のあたりめよりも水分が多いにも関わらず、イカのワタといしりが旨味を底上げしており、乾物よりも濃厚な味わいには非常に驚きました。
塩だけで作るタイプのもみいかは試していませんが、いしりを使ったタイプを飲兵衛にはぜひ賞味してほしいですね。