冷凍焼き芋は優秀な食品
当サイトではお取り寄せをメインに紹介していますが、冷凍食品で優秀なものの1つとして冷凍焼き芋は挙げられます。
最近ではスーパーでも安納芋や紅はるか、鳴門金時などの焼き芋に人気の品種が置かれており、焼き芋ブームが度々来ます。
しかし、冷凍焼き芋は購入するとクール便の代金が高く、まとめ買いしないと高額商品になってしまうのが一番のデメリットです。
そこで、今回は『石焼き芋に似た味を作り出し、その焼き芋をいつでも味わえる冷凍食品にする』というテーマでレシピを紹介します。
さつまいもの甘さの要因は?
色々な資料を確認した所、さつまいもを加熱した際に甘味を増やす方法は以下の3つになりました。
1.さつまいもに含まれているでんぷんが加熱されることで糊化される。
60℃ごろからデンプンが糊化して、マルトース(麦芽糖)は75℃になるとピークに達するそうです。
糊化というのは字のごとく糊と化すことで、精白米を炊くと甘くなり、柔らかくなるのと同じ原理です。
マルトース(麦芽糖)というのは駄菓子屋にも置いてある水飴のことであり、上白糖やハチミツよりも穏やかな甘味を持っているのが特徴です。
2.さつまいもに含まれるβ-アミラーゼが加熱と共にマルトースを増産する。
β-アミラーゼは糖分を分解する酵素であり、65℃から失活(酵素が働かなくなること)し、85℃ではほとんどの酵素が失活するとされています。
しかし、フライパンに乗せた瞬間に内部温度が一気にフライパンの温度になる訳では無いのと同じ様に、石焼き芋のさつまいもの表面温度は250℃に達してはいますが、内部温度は65~75℃に維持されているそうです。
逆に、内部まで火が素早く通りやすい電子レンジやフライで調理するとβ-アミラーゼによる恩恵は得られません。
特に電子レンジの場合は水分を持つものだけを高速振動させるマイクロ波が食材内部まで届き、一気に中心部まで加熱出来るので、すぐに熱が通ります。
一気に温度が上がる為、90秒以内にβ-アミラーゼが失活してしまい、石焼き芋やふかし芋と違って甘味が少なく感じにくくなる訳です。
石焼き芋と比べると甘味は半分しか無く、電子レンジによる加熱が美味しくない理由がわかりますね。
3.さつまいもに含まれる糖分の違い
あまりにも単純な話ですが、さつまいもの品種により甘味は異なります。
ある実験によるとクイックスイートという品種では糖度は12%まで上昇しますが、関東130号やパープルスイートロードは6%までしか上昇しませんでした。
美味しい焼き芋を作るにはそれなりに美味しいさつまいもが必要ということがわかります。
4.水分を飛ばして味を濃くする。
糖度を上げる方法は至って簡単な方法があり、それは水分を飛ばして味を濃くすることですね。
水分が飛ぶと同時にねっとりとした舌触りが強化され、付着性が強くなることも考えられます。
付着性の働き
とろみを付けると舌が感知しやすくなり、味を濃く感じやすくなります。
中華あんやシチューなどはとろみを付ける前は味が薄くとも、とろみを付けることで味が強くなります。
美味しい焼き芋の条件まとめ
長々とした説明になりましたが、つまり美味しいさつまいもの調理の仕方は『時間をかけてさつまいもを加熱し、水分を適度に飛ばす』という結論に管理人は落ち着きました。
ざっくりと先述したことをまとめてみると以下の2点に絞られます。
1.調理時間は長めで、ゆっくりと火を通す。
熱伝導率が良すぎるフライと電子レンジでの加熱ではさつまいものデンプンが糊化する前に、調理が終わってしまいます。
又、βアミラーゼがあまり働かない内に失活してしまうのも大きな影響になります。
なので、じんわりと食材に火を通すことが可能なシンプルな調理方法が甘味を増やすポイントです。
2.水分を飛ばす工夫をする。
味を濃くするために水分を飛ばしてしまおうという単純な結論です(笑)。
参考文献
Wikipedia 石焼き芋
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E7%84%BC%E3%81%8D%E8%8A%8B
甘藷の加熱調理に関する研究(第一報) 生成糖とβ-アミラーゼ活性
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1951/27/6/27_6_418/_pdf
理想の石焼き芋を家庭で再現するには?
器具を買ってもいいですが、家庭菜園用の石と要らない鍋で石焼き芋と同じ原理を再現することは可能です。
しかし、匂いが家に充満し、石が蜜だらけになって使い捨てor洗うのが大変という事態に陥ったのでこちらはあまりオススメではありません(笑)。
ということで、ある程度楽に出来る方法を探しましたが、『茹でてからオーブンで焼く』という手法なら一切面倒を見ずに、甘味が増やせました。
ただし、皮に関してはパリパリになりすぎて美味しくないので、皮が好きな人にはオススメ出来ません。
芋の選び方
基本的にどの芋を使おうと構いませんが、今回はあえて安くて品質がイマイチそうな小ぶりの安納芋を用いて作ります。
この芋はそのまま料理したらあまり甘味がなく、正直美味しくなかったです(笑)。
そんなさつまいもだからこそ、糖度が増えるかどうか確認するには相応しいと思います。
なので、実験する気がない人は手頃な大きさで、品質が良さそう物を使いましょう。
調理方法
小さめの芋で作っているので、時間は調整する様にしてください。
1.さつまいもの皮が剥がれないように丁寧に洗う。
芋の皮が無いと、そこから旨味が流れるだけではなく、水分が飛びすぎるので、タワシなどを使わずに指で丁寧に洗ってください。
2.たっぷりの水から茹でる。
3.沸騰したら落し蓋(重し)をし、水を足す。
長時間の加熱なので、多めに水を入れておくと面倒を見なくて済みます。
4.フタをして弱火で60分茹でる。
ポイント
大体90℃~95ぐらいの温度が保たれるのですが、さつまいもの中心温度が70℃あたりまでになるにはかなり時間がかかります。
小さめの芋でも30分で少しやわらかくなる程度であり、60分でスッと入りぐらいになります。
5.ザルにあけて表面の水気が乾くまで空気にさらす。
6.120℃のオーブンに入れ、3時間加熱する。
オーブンは遠赤外線を出すので、石焼き芋を作る環境と似たようなと働きを期待できます。
ただし、遠赤外線以外にも空気の対流があるので低温で加熱した方が放置しながら、じんわりとさつまいもの甘味を引き出せます。
とそれっぽい理由を付けていますが、一番の理由はこれぐらいの温度だと焦げることがないので、忙しい人でも他のことをしながら作ることが出来るからです(笑)。
7.3時間経ったら完成。
3時間経つとさつまいもの皮と身の隙間に空洞が出来ます。
8.ジップロックに入れて冷凍する。
家庭に急速冷凍可能な冷凍庫がある場合には出来たてを冷凍してしまいましょう。
さつまいもと白米はアミロースとアミロペクチンの構成内容がほぼ同じなので、炊きたてご飯と同様に急速冷凍した方が味が良いはずです。
ただし、無い場合には他の食品を痛めやすいので、素直に放熱してから冷凍することを推奨します。
実食
完成品の前に途中経過である1時間半加熱した焼き芋を割ってみました。
▼1時間半加熱したものです。
この時点でそれなりに食べれるぐらいになっていますが、甘味はまだ弱く、少し歯ごたえが硬いように感じました。
さつまいもの種類によってはホクホクとした仕上がりになりそうです。
▼3時間加熱したものです。
ここまで加熱すると先程のさつまいもと比べると一目瞭然の差が出て来ます。
トロリとした舌触りと糖度が十分に高まり、冷凍焼き芋と同様のクオリティにはなりましたが、良質な石焼き芋レベルまでには行かないレベルですね。
加熱時間を増やせばもっと、蜜が出てくる様な焼き芋が作れると思いますが、バランスの良さは崩れると思います。
まとめ
手抜き料理が非常に重宝される時代なので、可能な限り放置出来る様に構成しましたが、それなりのクオリティになったので満足です(笑)。
アルミや新聞紙で巻く、石で焼く、ツボ焼き芋で焼く、炭火で、溶岩石でとキリがないものですが、家庭でも楽して美味しい焼き芋は作ることが出来ます。
今回は冷凍焼き芋のレシピですが、当然の様に出来たての方が美味しく、冷凍すると少し味が落ちてしまいます。
なので、焼き芋を作った際には焼き立ても味わってください。