セールスポイント
・油揚げとは思えないコクと甘味がある。
・大豆の全てが入っている為、高栄養。
・1枚約350円の贅沢な油揚げ。
町家とうふ萬来について
三重県伊勢市河崎にある「町家とうふ萬来」は町中の喧騒から離れた地にある古民家を改装した飲食店であり、大豆製品を中心に取り扱っている専門店です。
店には「とうふ工房」が併設されており、豆腐や豆乳、湯葉、スイーツなどと幅広い大豆製品を取り扱っており、伊勢めぐりの時にも利用される有名な場所となっています。
今回はその中でも一番人気かつ、2022年に通販で販売される様になった特殊な油揚げであり、世界一大きく、高価な油揚げ「KITSUNE」を紹介します。
情熱先生というTV番組の紹介時では世界一高級でしたが、現在は「谷口屋」の「あおげ」が1枚750円と一番高値になっています。
油揚げの作り方と仕組み
細かいことは省きますが、しっかりと水を搾った薄めの豆腐を低温の油で揚げることで生地を膨らませ、高温の油で揚げ直すことで完成します。
1度目の加熱時にタンパク質が固まった部分を水蒸気が通り抜けることで、穴が開くと同時に全体が膨らみます。
2度目の加熱時に穴の空いた部分にタンパク質の皮が出来ることで穴が塞がり、冷めてもしぼみ辛く、中がフワッとしている訳です。
油揚げKITSUNEの特徴
日本では大豆製品を大量に生産しており、同時に製造時に余りがちなおからは約70万トンもの産業廃棄物になっています。
そのおからを捨てずに、丸ごとの大豆を味と栄養価に優れた油揚げに加工出来ないかという研究を約17年掛けた結果、2009年にようやく販売されたのが「KITSUNE」です。
そもそもおからを捨てる理由としては口当たりが悪く、そのまま加工すると崩れやすいという理由なのですが、それを上手に解決したのが「ミナミ産業」と「町家とうふ萬来」で共同開発した「ロハソイパウダー」でした。
「ロハソイパウダー」を使用した「KITSUNE」は環境に優しいだけではなく、栄養価をグッと高めた上で、従来の油揚げとは違う美味しさを生み出しました。
おからパウダーとの違い
似たような製品であるおからパウダーと何が違うのかと言うと、「ロハソイパウダー」は『大豆そのもの』をマイクロパウダーにしたものであり、おからパウダーは絞り粕である『おからだけ』を微粉にしたものです。
伝統敵な製法から余るおからは甘味があり、卯の花和えや揚げ物などに使っても美味しくなりますが、廃棄処分行きになるおからはギリギリまで豆乳を絞りきったものなので、あまり美味しくありません。
「ロハソイパウダー」は特許技術を取得しており、にがり農法(海洋深層水から抽出したミネラルを畑に撒く独自の農法)で栽培しています。
更に、三重県産フクユタカを使用しているので、単純に輸入品の安い大豆とは品質が違うのも大きな差となっています。
レビュー
今回紹介するのは「町家とうふ萬来」の「KITSUNE 2袋セット」です。
▼専用ダンボール。
2022年から通販での販売が行われる様になりました。
冷凍状態で商品が発送されてきます。
▼パッケージ。
可愛いキツネがデザインされており、1袋には3枚入っています。
実は冷凍保存するといずれの油揚げにせよ、長期間保存することが可能な為、スーパーで見切り品を見かけた場合にはまとめ買いしても困らないという裏技があります。
▼裏面。
従来の油揚げと比べて約4倍の食物繊維、炭水化物は約7倍となっており、おからに甘味と食物繊維があることがわかります。
記載されていませんが、大豆を丸ごと使った製品なので、カルシウム含有量もかなり多くなっており、日本食では珍しく、カルシウムが豊富な食材となっています。
▼中身。
1枚350円と決して安い油揚げではありませんが、代わりにサイズが男性の手のひらサイズとなっているのでかなりのボリュームになっています。
市販品と比べるとややオイリーに仕上がっている見た目ですが、油の酸化した嫌な臭いは一切感じさせなく、米油特有の良い香りがありますね。
これは米油の性質として素材が酸化しにくい影響から市販品の油揚げや厚揚げ、練り物の様に臭み抜き/油抜きをする必要がありません。
その代わり、米油は安いサラダ油の2倍以上の価格となっており、揚げ油に使うのは非常に贅沢な事なので、小売店で販売されている物では中々採用されていない訳ですね。
油揚げの炙り
シンプルであり、一番美味しい食べ方と言っても過言ではないのがトースターやグリル、フライパンなどで1分程温め、カリッとさせた状態ですぐに食べる事です。
サクリと歯切れが良く、中身はフワリ、出来立て・搾りたての豆乳の如く甘味がしっかりとあり、大豆の旨味がハッキリと感じられます。
「KISTUNE」の風味が良い理由は「ロハソイパウダー」を使うことにより、従来の厚揚げよりも加熱工程と調理工程が少ないので(加熱時間が長いと風味が飛ぶ)、大豆そのものの味と豆乳の様な甘い香りが強く残っています。
その上で、大豆特有の青臭さは完璧に取り除かれており、栄養価が高い製品にありがちな違和感のある味やアクは無く、むしろ、従来の油揚げよりも高みにいますね。
油揚げとしらすの梅ご飯
こちらは先述した油揚げを刻み、ネギとしらす、梅干しを添えたシンプルなご飯であり、醤油をかけないことで油揚げを主役に仕立てています。
多種多様な歯応えと「KITSUNE」特有の芳ばしさが見事に共存しており、いなり寿司やおきつねご飯などの様に甘辛くしなくともご飯との相性は最高ですね。
酸味と塩分、風味のカドが取れている長期熟成(3年熟成)の白干し梅(塩分20%)を使うことで、「KITSUNE」の良さを消していません。
きつねうどん
薄めの昆布だしと薄口醤油、砂糖を使って10分程煮るだけでしっかりと味が入りました。
炙って食べる分にも最高ですが、甘辛く炊いてもお揚げの美味しさを十分に堪能できますね。
ただし、関東風の濃口醤油をメインにした味付けにするのは少々素材が勿体ないので、関西風の味付けがオススメです。
総評
本製品は特許が取られている為、今後本製品と似た味わいは再現することは難しく、同じ価格帯の油揚げと比べると2ランク程抜きん出ています。
環境に優しく、大豆の甘味と旨味が良く、栄養価も高い…と文句の付け所は値段以外ありませんね。
問題はこの油揚げを食べてから市販の油揚げがただの油の塊に感じる様になってしまったことであり、今は全国各地の油揚げを色々とお試し中です。
「やみつき揚げ」という製品が「ミナミ産業」から販売されていますが、「KITSUNE」と恐らく同じ製品(材料や製法、メーカーも一緒の為)のはずですが、食べ比べていないので違うかもしれません。
オマケ1:役立つ大豆の栄養学
おから自体には食物繊維やカルシウムが豊富なので、牛乳が苦手・腹を下す人に最適なカルシウム補給源であり、管理栄養士である私からも是非食べて欲しい材料の1つですね。
絹豆腐・木綿豆腐にはほぼありませんが、従来の製法通りの厚揚げにはおからが比較的入っているので、料理に敢えて厚揚げを使うのもオススメです。
ただし、「相模屋」や「やまや」が販売している柔らかい・もっちりタイプの厚揚げには恐らく、カルシウムがほとんど入っていません。
これは絹豆腐の水分を少し抜いた&にがり以外の凝固剤を使った特殊な厚揚げであり、実質絹豆腐を揚げたものだからです。
オマケ2:何故、お稲荷様に油揚げ?
農耕民族である日本人にとってネズミは大敵であり、キツネはその害獣であるネズミを捕まえてくれることから大切にされ、神格化された程です。
そこで、キツネの巣穴にねずみを油で揚げた「ネズミの油揚げ」を置く習慣が出来ましたが、仏教を布教されると殺生をしなくとも済む代替品として昨今の油揚げが供される様になりました。
結果として、日本全国にはキツネを信仰/祀っている場所が多く残り、各地で様々な油揚げが文化として継承されています。