本記事について
ひたすら美味しい味醂を探す為に、【偽物ではない本味醂】を中心に試飲or料理に使用して評価していきます。
以前までは美味しいものだけを厳選して紹介していくスタイルでしたが、批判的な内容を知りたい人が増え、ステルスマーケティング(要はヤラセ)でないことを表す為に、『全ての製品を厳しくレビューする』事にしました。
本記事では従来の味醂を『本味醂』、偽物の味醂風調味料は『みりん風調味料』、塩を加えた不可飲料タイプの味醂を『加塩みりん』と表記します。
相も変わらず前書きが長いので、製品についての情報だけを知りたい人はコチラをクリックorタップしてください。
そもそも味醂とは何か?
日本では知らない人が居ないほど有名な調味料であり、アルコール度数が14%前後の甘口リキュールです。
蒸したもち米に米麹を混ぜ、焼酎(主に米焼酎)や醸造アルコール(サトウキビで作った純度の高いアルコール、甲類焼酎と同じもの、度数は35~40度)を加えて、熟成したものを圧搾・濾過して作ります。
熟成期間は短いものでは60日、長いものは10年とかなり幅があるのが特徴でしょう。
味醂は何故甘いか?
上記の項目で説明した『蒸したもち米に米麹を混ぜ、アルコールを添加』という流れはポートワイン(非常に甘いワイン、製造途中でブランデーを入れる)と一緒の製造工程です。
この工程の意味合いとしては糖分をアルコールへと変化させる酵母の働きを抑制することであり、アルコールを添加することで糖分を残しつつ、アルコール度数を高める事が出来ます。
なので、味醂はアルコール飲料のカテゴリーに分類されますが、発酵させている訳では無く、糖化して作っている訳ですね。
結果として、アルコール度数が高くなることはありませんが、代わりに糖分が高くなっていき、じっくり寝かした味醂は基本的には『甘味と旨味が増え、色が濃くなる』事は覚えておきましょう。
味醂と白味醂の異なる点
味醂の色合いが琥珀色/薄い茶色になっているのはアミノ酸(タンパク質の分解物)と糖分の熟成中に起こるアミノ・カルボニル反応により、褐色の物質メラノイジンが出来るからです。
これは醤油や味噌の色合いと一緒であり、熟成させた期間と濃度によって基本的には決まります(もち米の精米が下手でも色が濃くなるが、その様なメーカーはほぼ無い)。
つまり、白味醂と呼ばれる製品は熟成期間が短かめな内に出荷する為、『糖化と旨味が控えめで、色が薄い本味醂』となります(あえて、その特徴をウリにしているメーカーもある)。
ただし、白味醂に着色料を使った、特にカラメルを加えて色を濃くしたエセ商品もある為、購入する際には裏面の材料をよく見ましょう。
みりん風調味料と加塩みりん
みりん風調味料は酒税法に引っ掛からない、つまり、スーパーでアルコールが販売できなかった時代に生まれた味醂のノンアルコールバージョンですね。
実態は水に化学調味料や水飴などを加えた変わった味の砂糖水であり、アルコールが含まれていない為、『臭み消し効果もなく、ただただ高いだけの甘い水、その上、不味い』です。
一方、加塩みりんは不可飲料処置、つまり、飲んで不味いアルコールは課税される事無く、単純に調味料として販売できる所に目をつけて開発された塩入り味醂です。
一般的にはみりん風調味料と同じ扱いがされている加塩みりんですが、安くて味が良いものを選びたいのならば加塩みりんを選ぶべきですね。
味醂の料理への影響
本味醂を先に使う事で臭みは無くなり、塩を全体に振って10分寝かす事で素材の旨味を引き出せ、調理中にアルコールが飛ぶと同時に臭みはゼロに。
最大の特徴は甘味とトロミにあり、清酒に含有される糖分が2~5%の所、味醂はメーカーによって差はあるものの40%以上の糖分が含まれています(エキス分◯◯%と表示)。
この糖分が多いことにより、アルコール自体の刺激を和らげ、素材によく絡むトロミ、砂糖とは違った複合的な甘さ、そして、旨味が加えられます。
特に、魚介類の臭みには抜群の効果があり、魚の嫌な成分と味醂が混ざることで即座に生臭さを消してくれます。
かまぼこや煮魚に味醂を使うのには上記の意味があり、『代用できる調味料は無い』ので、一般的に砂糖と日本酒を混ぜれば味醂の代用になるとよく言われているのは嘘となります。
味醂の効用一覧
1.テリ・ツヤを加えられる。
2.アルコールによる臭み消し効果。
3.複合的な糖分と旨味を添加。
4.アルコールを感じさせにくい。
5.トロミが付けられる。
6.芳ばしさが付けやすくなる。
7.煮崩れ防止(糖分が身を締める)。
8.生臭さの抑制効果。
9.マスキング効果
※匂いの元の表面に香りを付け、臭みを消す。
例:肉に胡椒、鰻の蒲焼きに山椒など
味醂の正しい使い方と隠れた効果
その1 魚の生臭さを即座に減らす
本味醂は製造・熟成中に糖分・タンパク質がメイラード反応を起こす事で茶色に色づいてきますが、その過程で出来るα-ジカルボニル化合物が魚の生臭さを即座に消してくれます。
つまり、『魚介類に関してはあらゆる臭み消し効果の中でも本味醂に優るものが無い』という事になり、刺し身や切り身の状態で本味醂を振りかける事で臭みをすぐ消せます。
刺し身のヅケを作る際に本味醂を使うのはこの効果があるからであり、『煮魚の場合は最初から味醂を使うことでアルコールの臭み消し効果も併用可能』となっている事は絶対に覚えておきましょう。
▼貝類の下処理に。
下処理した生の貝に本味醂と塩で和えて、沸騰したでサッと湯がき、氷水で熱を取ります。
本味醂を使いすぎると香りが付きすぎるので、この技法を使う場合には本味醂の量を控えめにするのがポイントとなっています。
▼本気でウマイ握り寿司作りに役立つ。
タコやタイ、スズキなどの繊細な風味の材料には向いていませんが、他の魚介類ならば色々と使える技法です。
和食以外にも魚介類を使う料理は多くある為、和食にこだわらず、洋食ではワインやブランデー以上に、中華では紹興酒以上に仕事をしてくれます。
その2 煮切り味醂
沸騰させる事でアルコールを飛ばし、シロップの代わりに使用したり、アルコール分を全く必要としないタレ(麺つゆや煮切り醤油など)を作る時に用いる技法。
本味醂には香りがある乙類焼酎を原料にする事が多く、アルコール分も低くないので、素材の風味を活かしたい時には香りを抑えた煮切り味醂を使う場合があります。
ただし、基本的には加熱時にアルコール分を飛ばす事が臭み消しのポイントの為、煮切り味醂は一部の料理だけしか役に立たないかもしれません。
▼松前漬けで差が出る。
煮切り味醂で作った場合と未加熱の本味醂をそのまま調味液として使用した場合ではメリット・デメリットが分かれます。
煮切り味醂の場合は臭み消し効果が弱い分、まろやかな味わいになり、アルコールを飛ばさなくて済む分、短期で味が馴染ませられます。
一方、そのまま本味醂を使った場合には1ヶ月ほどの熟成が必要な代わりに、スルメと昆布の臭みはほとんど消え、本味醂の風味と旨味が豊かになります。
同じレシピでも加熱・非加熱で驚くほど味が異なりますが、アルコールに弱い人や子供、妊婦が居る時には調理師である管理人は煮切り味醂を採用しています。
その3 照りと複雑な味を加える
単純にツヤを加えるだけならば砂糖やハチミツ等でも再現出来ますが、甘味を控えめにしながらもトロミとツヤ、加えて複雑な旨味を加えられるのは本味醂だけです。
煮魚や肉の煮込みならば仕上げに本味醂を表面に振るだけで、プロらしい味わいに仕上がります(アルコール分に注意)。
本味醂を大量消費する京都や大阪、愛知県などの料理では欠かせない調味料の1つであり、醤油と本味醂だけでもドッシリとした味わいを作ること出来、フレンチの本格ソースに負ける事が無いほどです。
▼煎餅に旨味をプラス。
今販売されている煎餅は魚の出汁と塩、醤油が基本の味付けですが、仕上げに本味醂を塗ることで奥深い味わいを加えることが出来ます。
味と見た目が良くなる上に、海苔や薬味などがしっかりと付いてくれるので、料理や菓子を作る時にも役立ちます。
その4 素早く味を染み込ませる
アルコール分子は小さく、脂肪性物質を溶解する事で食材への味の染み込みが良くし、日本だけではなく、海外でも様々な酒に漬け込む料理が存在しています。
加えて、本味醂には非常に糖分が多い酒である事から水分を多く保つ働きがあり(保水性が高い)、しっとりとした仕上がりになる嬉しい効果があります。
骨付き肉に醤油と本味醂をブレンドした調味液に漬け込んでおけば、加熱する時間が短くとも中まで味がしっかりと馴染み、柔らかく仕上がる上、臭みが消えてくれます。
本味醂の良さを活かす場合には醤油を少々減らし、塩で味を整えるとまた違った顔を見せてくれますよ。
味醂の保管方法
基本的には日光を避けた場所ならば常温での保存が可能であり、開封後も常温保存で構わないとされています。
ただし、糖分が多い酒の為、管理人は防虫対策として開封後は冷蔵庫での保管をオススメします。
密封容器があればそれでも良いかもしれませんが、しょっちゅう使う調味料を手軽に取り出せないので不便です。
欠点としては冷蔵庫で味醂を保管した場合には液体内に含まれている多くの糖分が入っている事から白い結晶がフタ付近に出来やすくなる事でしょう。
手持ちの本味醂を高級品にする方法
実に簡単な方法ですが、直射日光を避け、未開封の状態で高温でない場所に保存することで瓶内熟成が進みます。
味醂には賞味期限が一応記されていますが、よほど酷い場所に保管しない限り、家庭でも幾らでも高級品に仕立てることが可能となっています(実質、賞味期限は無い)。
今回の記事では熟成させてしまうと評価が変わってしまうので購入して、1年以内に封を切っていますが、【まとめて気に入った本味醂を買って長期保存すれば幾らでも美味しくなる】という事は絶対に覚えておきましょう。
この際、透明のペットボトルと瓶は光の影響を受けやすい為、黒色or茶色の瓶に入っている本味醂を選ぶことをオススメします。
ほとんどの醸造メーカーが教えてくれないのは、家庭で熟成されると長期熟成の製品が売れにくくなるからかもしれません(笑)。
味醂は元々飲むものだった
元々は調味料だけの活躍では留まらず、『甘味のある高級酒として数百年単位で日本人に愛用されているもの』でしたが、今では料理用の印象が強くなってしまいました。
第二次世界大戦後、ビールやウイスキーなどの洋酒、辛口の日本酒(アルコール発酵が不十分の酒が多かった為、甘口が多かった)が台頭し、甘味が強い酒の消費量はガクッと下がりました。
味醂を使った料理は蕎麦の汁や蒲焼のタレ、佃煮などと専門性の高い料理に用いられる事が多かった為、一般家庭に普及されたのも洋酒に人気が押され気味になってからですね。
恐らく、飲料としての利用者が減った為、味醂の製造業者が企業努力を行い、和食のクオリティをアップさせる調味料として売り方を変更したのでしょう。
飲んで美味しい本直しと柳陰
普及した時代(主に江戸時代)には氷が気軽に手に入る訳では無く、だからといって、常温のストレートで飲むのでは甘すぎます。
そこで、完成品の味醂と焼酎を同割し、甘味とアルコール度数を高めた「本直し/直し」「柳陰(やなぎかげ)」と呼ばれる飲み方が一般的でした。
井戸水で冷やし、夏の暑気払いや体力を使う仕事の合間に飲む事もあったそうです。
柳陰は現在販売しているメーカーは数える程しかないので、呑むたびにブレンドしても良いですし、梅酒用の瓶などで柳陰を作って熟成させるのも又一興ですね。
屠蘇散にも利用される味醂
御屠蘇(おとそ)は屠蘇散と呼ばれる複数の薬草(山椒、シナモン、生姜など)を日本酒や味醂などに漬け込んだ飲料であり、元旦の朝に呑む縁起物です。
ざっくりと言うと無病息災を願うものであり、『一人これを呑めば一家疾無く、一家これを呑めば一里病無し』とされてきました。
今でも年末年始になると上記の画像の様な屠蘇散付きの日本酒や味醂などが販売されているのを見かけますね。
▼御屠蘇の見た目は本味醂とほぼ一緒。
ちなみに、健康に良いことで有名な養命酒は14種類の生薬/漢方を漬け込んだ本味醂であることは意外と知らない人が多く、養命酒は酒の扱いではありません(第二類医薬品)。
あらゆる味醂をレビュー
ここから使った様々な味醂を1品ずつ評価していく訳ですが、本味醂の性質は以下の様になりました。
①.1年熟成の本味醂は旨味が少なく、糖分がマイルドで色が薄く、上品。
②.2年熟成の本味醂は甘味と旨味もそれなりで、色が濃くなってくる。
③.3~5年熟成の本味醂は旨味が多く、糖分とトロミが強く感じ、色も濃い。
④.10年以上熟成の本味醂は旨味が減り、酸味と熟成した味わいが強くなり、黒色に近い。
つまり、例外を抜かせば【熟成が進むほど色が濃く、甘味とトロミが強くなり、マイルドになる】という事ですね。
ただし、着色料を添加、又は加熱処理(高温保存で色が早く濃くなる)で色を濃くした味醂は当然ながら旨味と糖分の質はあまり良いとは言えません。
実際に論文や本などを参考にした所、管理人の体感と実験結果は類似している点が多く、【料理に使うならば旨味が多く、コストが良い2~4年熟成したもの】、【それ以上に熟成させたものは飲酒用】という結論に管理人は達しました。
上記の重要なポイントを抑えて、本味醂の選び方を考慮してみてください。
本味醂 短期熟成(1年以下)
「タカラ本みりん」や「マンジョウ本みりん」などを筆頭に、市販品の多くの本味醂はタイやベトナム産の外米で作ったものであり、残念ながら味は落ちます(日本米の旨味は強く、加工品で非常に差が出る)。
又、加温して素早く糖化を進める事で色を濃くし、醸造アルコール/甲類焼酎を使っているせいで旨味と風味が本味醂と比べて不足気味です。
加えて、甘味とトロミ成分であるデキストリンを補う為に、様々な糖類を添加物として利用しています。
スーパーで買えるものは大抵五十歩百歩であり、対して味の差は無いので本記事では紹介しませんが、見かけにくい短期熟成の本味醂はレビューしていきます。
相生古式 本みりん/相生ユニビオ
データ
原材料:もち米(国産)米こうじ(国産)
醸造アルコール(国内製造)乙類焼酎(国内製造)
日本酒だけでは無く、ウイスキーやウォッカ、焼酎などを製造している酒造メーカーであり、本味醂に力を入れているのが特徴です。
短期熟成のカテゴリーには入れていますが、熟成期間は200~300日と量販品よりもしっかりと寝かしているのでまろやかさとコクはこの価格帯では中々と言った所ですね。
ロックで呑むとややボケた印象を感じたので、冷蔵庫やアイスペールなどでキンキンに冷やしてあげるのが良いでしょう。
最上白味醂/馬場本店酒造
データ
原材料:もち米(国産)米麹(国産)醸造アルコール 米焼酎
熟成期間:60日前後
米の糠をしっかりと取った白度の高い米を使うことで色が薄い本味醂に仕立てており、江戸時代から変わらぬ製法を採用しているそうです(他の蔵も精米はしっかりしているのでほぼ一緒)。
旨味と甘味が控えめな白味醂であり、料理に色を出したくない料亭風/京風のメニューを作るときには使え、甘味と旨味が少ないのでストレートで呑むのが良いでしょう(柳陰だと非常に物足りない)。
旨味が不足気味なので、米焼酎は控えめに使用、メインを醸造アルコールにすることで後味をスッキリさせているので、個人的には呑む用本味醂という印象であり、『最上(さいじょう)』とは言えませんね。
白味醂は大量に使わないと存在感が弱い為、後述する長期熟成の本味醂の2倍ぐらい使う必要があるのでコスパは悪く、アッサリした味を好む人のみ選ぶ事を勧めます(スーパーの安物よりは遥かに良いですが)。
トモエ印本味醂/入江豊三郎本店
データ
原材料:もち米(国産)米麹(国産)醸造アルコール 糖類
本味醂を使った薬膳酒「保命酒」で有名な醸造メーカーであり、ベースとなる「トモエ印本味醂」は白味醂に分類される製品でしょう。
全体的に白味醂らしい軽めの味わいなので、力強い甘じょっぱい料理には不向きですね。
上記の写真のサイズは透明の瓶で600mlのタイプなので割高ですが、一升瓶のタイプだと遮光タイプの茶色の瓶に加え、非常にコスパが良いです。
家庭で熟成させる場合には最適なリーズナブル品であり、飲食店でも使用している事が多い本味醂となっています。
本味醂 2年熟成
このぐらいの熟成期間を経ると濃厚なトロミとコクが生まれ、製品に含まれている旨味の素であるアミノ酸も増えてきます。
美味しい和食を作りたい、照り焼きや焼き鳥などで本格的なタレを作りたいなどの場合には熟成期間が長いものを選びましょう。
ただし、熟成させている環境によって味わいが大きく変わる様であり、長期熟成でありながらもトロミや旨味がさほどない製品があるのには要注意。
三州三河みりん/角谷文次郎商店
データ
原材料:もち米 米麹 米焼酎(全て国産、自社製造)
熟成期間:約2年
三河みりんの代名詞的存在である本製品は特別なイメージがあるかもしれませんが、実際には『愛知県の三河地方で製造されているだけの本味醂』となっています。
なので、三河みりんと称しながらも味が優れている訳ではありませんが、本製品は和食の職人からも大きな支持を得ています。
実際に使ってみると2年以上熟成させた事から生まれた糖度の高さとトロミの具合も良く、旨味も豊かな為、使用量は安い本味醂と比べても半分程度で済むのでコスパも悪くありません。
▼太刀魚の味醂焼き、梅と九条葱添え。
王道でありながらも使い勝手は良く、初めての濃厚な本味醂を試すには最適な一本であり、料理用と割り切れば3年熟成ものに負けない信頼のおける製品ですね。
ストレートで呑むには旨味がやや足りず、甘味が強く感じる為、柳陰にする場合には焼酎の割合を増やすのが良く、ちょっと癖のある焼酎で割った方が旨味と風味を補うことが出来ます。
向いているのは梅酒であり、この手の濃い本味醂は氷砂糖+ホワイトリカーで作るよりも深みがあり、「角谷文次郎商店」からも「三州梅酒」という製品があるほどです。
昔仕込本味醂/甘強酒造
データ
原材料:もち米 米麹 粕取焼酎(全て国産)
熟成期間:2年以上
甘強(かんきょう)という社名の由来は『甘い』『強さ』本味醂を作っている事が由来であり、その名に相応しい、強烈な甘味と酒粕焼酎を使っているのが特徴ですね。
酒粕を使った焼酎は「粕取り焼酎」「酒粕焼酎」と呼ばれる珍しい焼酎ですが、酒粕を蒸留して作った吟醸酒粕焼酎という味と香りに優れたものを「甘強酒造」では採用しています。
良質な材料を使い、もち米を高温蒸気で1時間程蒸して作る特殊な製法から生まれた強烈な甘味は砂糖が要らないほどであり、程よい旨味もあるので少量使うだけでも料理の格を上げてくれます。
▼牡蠣フライの鉄板味噌焼き。
赤味噌と本製品をたっぷり使った甘味噌は砂糖で作ったものと違い、後味がスッキリしながらも旨味豊富、そんな味噌ダレで熱々の牡蠣フライを載せて食卓へ、当然美味。
後述する「愛櫻 3年熟成」よりも吟醸香は穏やかですが、料理に使う分にはクセが無く、呑む場合には他社の本味醂よりもほのかに野性味がある様な味わいがありますね。
甘味が強いのでストレートで呑むには少々厳しいですが、風味のバランスは良いので、柳陰を作るときには甲類焼酎でも十分美味しく仕上がり、良く冷やして呑むのが好みでした。
本味醂 3~5年熟成
味醂の概念が変わってくるものが多く、料理の仕上がりが圧倒的に変わり、管理人はこのランクのものをベースに使っています。
ただし、トロミと甘さ、色合いが非常に強くなっている為、『料理の技術がそれなりに付いてきたら手を出す』ぐらいにでないと焦げとトロミが付きすぎるほどです。
逆に言えば、味もトロミもしっかりしているので、安い本味醂の1/3ぐらいの使用量で済む程なので、高級すぎて手が出ない製品ではありません。
李白 純米本みりん/李白酒造
データ
原材料:もち米 米焼酎 米麹(全て国産)
熟成期間:3年
プロの定番本味醂の1つであり、通常の本味醂を製造する配合よりも麹を多く使用することで、米由来の旨味とコクを持っている白味醂となっています。
熟成期間が3年の割には甘味は比較的上品であり、使い勝手は良いですが、価格が高いところが気になりますね(5年熟成だと非常に濃くなるそうなので、いつか試す予定)。
上記の点から料理には少し多めに使いたい本味醂ですが、甘味が少ないのでロックやストレートにして飲んでみる方がむしろ本領を発揮する印象でした(柳陰にするとやや物足りない)。
全ての材料は自社にて製造しており、家庭で熟成させることもオススメしている非常に良心的な蔵元なので、完全国産品にこだわる人や熟成させる場合には選択肢に入る一本ですね。
福来純 伝統製法熟成本みりん/白扇酒造
データ
原材料:もち米 米麹 米焼酎(全て国産)
熟成期間:3年
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【プロが21本実食比較】究極の料理酒【レシピ付き】
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上記の記事でもチョロッと紹介している本製品ですが、同社の料理酒同様に本味醂も優秀です。
オーソドックスな本味醂ですが、非常にまろやかな甘味とカドの取れた口当たり、旨味も十分ある為、「三州三河みりん」と同様に初めての本味醂にオススメの1本ですね。
この3年熟成の本味醂は「白扇酒造」の中では驚くことに一番グレードが低いものですが、この製品ですら満足度が高いクオリティであり、ロックにしても柳陰にして呑んでも良いです。
料理酒と一緒に販売している程人気が高いの製品郡ですが、料理酒は上品な味わいを表現出来、本味醂では濃厚な味が作り出せるので両方ともストックしておくと非常に便利ですね。
古式三河仕込み 愛櫻 3年熟成 /杉浦味醂
データ
原材料:もち米 米麹 酒粕焼酎
熟成期間:3年(1年熟成もあるので注意)
特殊な味醂を作るメーカーの1つであり、もち米と米麹を合わせたもろみを6ヶ月熟成させ(高級本味醂を作るメーカーの多くでも3ヶ月が多い)、酒粕から作った焼酎を加えてから再度熟成させています。
「昔仕込本味醂(甘強酒造)」と同様に高級な酒粕焼酎で作ったものを「杉浦醸造」では採用していますが、『もろみの熟成は3倍、熟成期間は1年長い』事から別物の仕上がりとなっています。
酒粕焼酎で作った「愛櫻 3年熟成」は日本酒を彷彿させる味わいと風味がありながらも、味醂らしい甘さがドッシリと感じられます。
▼味醂の色合いとは思えない黒さ。
色合いが非常に濃く、利き酒グラスの青い丸が見えない程となっている為、美しい素材の色を活かした料理には間違いなく不向きですね(笑)。
しかし、大吟醸の様なフルーティな香りがする本味醂は他社製品には無く、本味醂の枠を超えつつある本製品はパンチの効いた料理を作り出すことが出来ます。
そば汁や野菜の煮物の様な繊細な料理には合いませんが、牛肉や馬肉などの佃煮、幽庵地(酒と醤油、味醂、柑橘類を使った漬けダレ)、西京漬け(西京味噌を味醂で伸ばす漬けダレ)は別世界の美味しさが待っています。
一子相傳 小笠原味醂/小笠原味醂醸造
データ
原材料:もち米 米麹 焼酎(全て国産)
熟成期間:4年
『国産品のものだけで、米麹は手作り、加熱処理せずにそのまま手絞りで生詰めを行う』という作り方を100年以上続けており、その間、常に高評価を得てきた醸造メーカーです。
手作業でありながらも衛生管理を徹底的に行っている為、加熱処理を行うのが本味醂や日本酒では普通ですが、本製品は珍しい部類の生酒/生詰めとなっています。
その分、仕込みに手間が掛かっているので600mlで1,500円前後と市販品の5倍、本格的な本味醂と比べても約1.5倍と非常に高価。
ですが、その値段を超える美味しさがある本味醂であり、この製品を管理人は一番のお気にいりにしています。
加熱処理を行うのはアルコール発酵や腐敗を防ぐ為。低温殺菌で行う事で酒の味は極端に損ねないが、風味はやはり減ってしまう。
▼煮穴子や蒲焼きなどが一段と美味に。
そば汁は麺に良く絡み、焼き鳥ではタレが落ちにくく、煮魚は濃厚に仕上がり最高、食前酒からデザートワインの代わり、なんでもこなしてくれる銘品の1本ですね。
日本のフレンチレストランでも飲酒用に採用している店が複数あり、あまりの美味しさから本味醂だと思わない人が続出するそうです。
非常に濃厚なので呑む場合には水や氷、焼酎などで割った方が良いかもしれませんが、1度、そのまま飲んでみて、本味醂の奥深さを試してみてください。
加塩みりん
アルコール度数が低く、塩分が入っている為、本味醂とは名乗ることが出来ないですが、みりん風調味料に比べれば遥かに使えます。
価格は本味醂の1/2から2/3の価格で購入できるので、意外と悪くありません。
アルコール度数が低く(8%前後)、糖分が高い為、開封後はすぐに使うことを心がけ、冷蔵庫での保存が無難でしょう。
当然、飲んだら不味いので飲料用には絶対にしない様にしましょう。
オーサワの発酵酒みりん/オーサワ
データ
原材料:米 米麹 食塩(全て国産)
熟成期間:1年前後
有機食品を多く手掛けているオーサワの製品であり、米麹と米から醸造してアルコールを生み出しています(蔵元に製造委託をしています)。
アルコール分8.0% エキス分43.0%以上、塩分1.5%となっており、本味醂よりもアルコール度数は低いものの、エキス分は本味醂とほぼ同量。
塩分1.5%の割には料理が塩っぱく仕上がらない為、旨味はそこそこに入っていることがわかり、甘さも白味醂程度にはあり、色はやや濃い目。
又、臭み消し効果も思いの外効き、魚の切り身に本製品を振りかけて少し寝かせるだけで煮魚が十分に美味しくなるので、コストを考えれば良品ではないでしょうか。
総評
色々な味醂を試している途中なので記事の内容は随時更新しますが、現状でオススメしたい本味醂は以下の5本であり、呑んで良し、料理して良しの製品ばかりです。
2年熟成「三州三河みりん/角谷文次郎商店」
2年熟成「昔仕込本味醂/甘強酒造」
3年熟成「福来純 伝統製法熟成本みりん/白扇酒造」
4年熟成「一子相傅 小笠原味醂/小笠原味醂酒造」
特殊な枠「古式三河仕込み 愛櫻 3年熟成」
昔からある酒造では冬と春の間に清酒/日本酒の仕込みが終わり、桜が咲く頃に本味醂を作ることから「サクラ」と名の付く製品が本味醂には多いそうです。
しかし、本味醂は春以外にも通年使う和食の基本調味料なので、お気に入りの1本を見つけると和食づくりがグッと楽しくなりますよ。