セールスポイント
・普通の長ネギよりも巻数が多く、煮崩れ無い。
・甘味と辛味が強く、様々な用途に役立つ。
・今では希少な江戸野菜を楽しめる。
千住葱/千寿葱とは
東京に住んでいても知らない人が多数いると思いますが、江戸野菜(詳しいことは後述)の1種である「千住葱」は東京都足立区千住河原にある市場で取引されている特殊なものです。
この市場は「山柏青果市場」と呼ばれている日本唯一の葱専門市場であり、その中でも全国に6件しかない葱商「葱茂」が販売している千住葱を「千寿葱」として販売しています。
「千寿葱」というブランドで取り扱われていますが、他社の葱商から千住葱を購入して比較した所、味わいには大きな差はなかったので、手に入る千住葱なら間違いは無いでしょう。
主な特徴としては葱の白い部分が多く、柔らかでありながらも締まりがあるので、火を通しても煮崩れせずに甘味が出るので様々な料理に適しています。
江戸野菜について
東京やその周辺で伝統的に生産されていた野菜のことであり、江戸期から始まる東京の野菜文化を継承している在来種の野菜が「江戸野菜」です。
しかし、かつて江戸と呼ばれた地域と比べ、現在の東京はかなり広い敷地面積を有しており、江戸と呼ばれた地域は全て農耕が出来る環境/土地がありませんでした。
そこで、江戸野菜の灯火を絶やさない為に、現在の東京全域と隣接している県などで栽培された在来種ならば江戸野菜と名乗ることが可能とされています。
有名な江戸野菜を挙げると「千住一本ネギ」「谷中ショウガ」「練馬大根」当たりが該当すると思いますが、現在、「東京都農業共同組合中央会」に登録された江戸野菜の品種は52種類にもなります。
レビュー
今回紹介するのは「葱茂」の「千寿葱」です。
▼パッケージ。
先述した様に東京に住んでいる人でも知らない野菜である理由は『ほとんどが東京の老舗飲食店や葱に力を入れている飲み屋などでほとんど消費される』からです。
通販が気軽になった時代になって多少は手に入れやすくなりましたが、1~2本で300~400円前後と高価なこともスーパーで仕入れにくい理由の1つでしょう。
▼iPhone13とサイズ比較。
市販されている根深ネギ(長ネギの事)よりも太さと重量があり、輝くほどに白い葉鞘は見た目も違います。
全体的にキレイな見た目をしていますが、「千寿葱」の中でも2月から3月に採れる葱は「霜枯れ」と呼ばれており、見た目は枯れていても中は真っ白で艶があります。
加えて、霜が降りる厳冬期には葱は糖度を高め、野菜が凍りにくくなる事(凝固点降下、ほうれん草やキャベツなどでも同じ現象が起こる)から鍋との相性は最高になります。
▼断面。
カットしてみると普段食している根深ネギよりも巻きの数と中心にある芯の様な部分が小さい事がわかるはずです。
非常に瑞々しく、カットした面からはしばらくするとエキスがたっぷりと滲み出てきます。
▼小口切りにしてからほぐしたもの。
このことから小口切りをしてからほぐすとカサが増えた上に、ふんわりとし、歯に当たる部分が少なくなるので、薬味に最適な形状となります。
又、空気に晒すことにより辛味が増してくれるので、ネギにこだわりを持っている老舗蕎麦屋やラーメン店では千住葱が使用されています。
江戸時代に流通していた千住葱は当時から『飛び切り甘くて煮崩れをおこさず、それでいて口の中に入れるととろける葱がある』と褒め称えられ、蕎麦屋からは『薬味にすれば一本で他の葱の倍以上取れる』と言われていました。
つまり、何をしても美味しいということなので、日本人が使用する料理ならば活躍する機会は幾らでもあるでしょう。
千住葱の塩ダレサラダ
斜切りにしたネギをほぐしてから塩ダレ(レモン果汁、黒胡椒、塩or鶏ガラスープの素、太白胡麻油)と和えるだけの簡単メニューですが、味わいは逸品です。
作りたてならばネギの刺激的な辛さとシャキッとした歯応えが楽しめ、しんなりさせれば千住葱の甘さと旨味を堪能することが出来ますね。
千住葱を取り扱っている居酒屋などでは女性に人気のメニューであり、低カロリーでありながらも千住葱の旨味が物足りなさを感じさせず、ご飯と酒のどちらのお供になってくれます。
千住葱のねぎま
焼き鳥屋の定番である鳥もも肉とネギを交互に串に刺して焼いたものですが、ネギが変わると驚くほどに味が変化します。
周りはトロリと甘味が染み出し、中心部は僅かにシャキリとした歯応えが楽しめ、肉との旨味は言うまでも無く、美味。
千住葱自体の味が良い為、七味や山椒は不要であり、粗めの塩さえ用意しておけば贅沢な食事を過ごすことが出来ますね。
家庭のグリルやオーブンなどで焼くときはしっかりと竹串を水に浸け、アルミホイルで持ち手を包まないと串が折れやすくなります。
総評
根深ネギである曲がりネギや深谷ネギ、下仁田ネギ、大和田ネギ…などと色々なネギを料理にしてきましたが、どの料理にしても美味に仕上がるのは千住葱だけですね。
千住葱は品種も大事かもしれませんが、葱商が厳選したことにより、ここまで立派な味わいを保つことが出来ています。
昨今では国が食料自給率を高める為に生産効率が良い品種の農作物しか支援金を出さない傾向にあるので、国内の農作物は年々味を落としています。
しかし、厳選した昔ながらの品種の野菜はトップクラスの味わいを約束してくれるので、1回は食してみて欲しいですね。