本記事について
本記事を作成する時点で美味しかったメーカーは33店舗のウナギメーカーの内6社が該当しており、ブログ内で紹介しているメーカーを基本選んでいます。
いつもならばランキング/比較などの記事を執筆する時には試食したメーカー名を全て記載しますが、今回は伏せさせて頂きます。
というのは、『マズイ鰻の理由を沢山記載するので、選んでいない鰻の蒲焼きメーカーを叩いている』内容になってしまうからです。
ウナギ博士になるほど情報が満載なので
日本における養鰻の歴史はかなり長く、1879年からと言われており、古来から高級魚として扱われてきました。
しかし、日本人が思っているよりもウナギは経済的な理由から様々な事柄が世界で起きており、味に関する話よりも長く語れる内容となっています。
なので、本記事は話が多少重複することを承知でウナギの味に関することとそれ以外の情報について分けています。
いつも通り、兎に角前述が長いのウナギのおとりよせの情報だけを知りたい人はコチラをクリックorタップ、又は目次から気になる項目まで飛ばしてください。
おとりよせの時に最低限知っておきたい単語
関東風ウナギ
様々な流派がある為、一概に言えないが基本となるのは焼き→蒸し→焼きの工程から仕上げにタレを潜らせて焼く事を数回繰り返す。
又、蒸すことでウナギが崩れやすいことからウナギを開き、切ってから串を刺して調理している。
身の脂がよく落ちる為、アッサリ目になるが、その分、ホロリとした食感と身の味を堪能できる。
その為、老舗のウナギ屋は甘味と辛味が少ない、上品なタレが多い。
関西風ウナギ
蒸さないことにより身がしっかりしている状態で焼くことから、長焼きというウナギを切っていない形態を取ることが出来る。
長い金串を刺して焼くのは火が通るのが遅い為、熱伝導率が良い金串で内側からも焼いている。
脂がしっかりと残っており、コッテリとした仕上がりとパリッとした歯応えが特徴。
タレは全体的に甘味と辛味が強めになっている傾向がある。
白焼き/素焼き/地焼き/直焼き
関東風では背開きにしてから頭を取り、焼き、蒸し、再度焼き上げたもの
関西風では腹開きにして、頭を付けたまま焼き上げたもの。
有頭ウナギ
関西風では頭を付けたまま焼く為、付いたままのものが有頭ウナギ。
切り落としてからうなぎ料理にするが、この頭のことを半助といい、串に刺して提供していることもある。
ウナギの味の決め手とは何か?
おとりよせの本題であるウナギの美味しさの決め手とは何かを知る為の項目です。
ウナギの味は品種ではなく、養殖過程と調理技術が大きい
日本では昔から親しまれているウナギがニホンウナギという品種であり、採苗されるシラスウナギ(ウナギの子供)もニホンウナギだけでした。
しかし、ニホンウナギは今では希少になってしまったので、海外品種のシラスウナギを輸入し、日本で育てているのも珍しくありません。
沢山食べていると見た目や味からなんとなく品種がわかってきますが、ウナギ業界では大きな差は無いと言われており、美味しいと思ったのならばそこが自身にあったメーカーであり、品種に関しては絶対的にこだわるポイントではありません。
では、どこの作用が大きいかというと調理技術は当然ですが、養殖技術、特に与えている餌で決まる事が多い様です。
しかし、同じ環境・時間で育ったウナギでも脂のノリや身の締りなどは個体差によって大きく変わるので、選別作業や出荷タイミングも非常に重要となっています。
大量生産品VS職人による手焼き
ウナギの養殖を行っているメーカーの多くはそのまま調理、販売まで行っている一貫生産体制を敷いている事が多いので、自社のウナギの特徴ごとに最適な焼き方をしています。
基本的にはベルトコンベアの様な機械上で蒸し・焼きなどを効率的に行っていくライン作業になっています。
しかし、炭火を使った手焼きが独自の美味しさを持っていることはわかっているので、機械製造だけではなく、手焼き専門の調理場を設けているメーカーも少数ながらあります。
小さなウナギ屋が通販で販売している場合は職人が手で焼いているので、仕入れ値や手間暇などの関係から高値になってしまいますが、1つ1つのウナギに対して微調整が出来る調理技術が活かされています。
機械製造の場合は脂が残っている物が多く、やや硬めに仕上げてあるので消費者自らが微調整しながら食べられるのがメリットです。
手焼きの場合には関東風と関西風、更に職人の腕前で品質が変わってしまいますが、昔ながらのウナギ、要は店で食べている白焼きと蒲焼を楽しめるのがメリットです。
つまり、どちらが上ということはなく、購入者の好みで決めるものなのです。
大きければうまい?小さいのはガッカリ?
こちらもやはり一概に言えませんが、大きいのは信頼出来るメーカー以外はなるべく避けるのが無難だと考えられます。
関東では大きいものはボッカとかボクなどと呼ばれ、小骨が大きくなり、本来は出荷されないものでした。
このこともあり、管理人が250gオーバーの超特大蒲焼の存在を初めて知ったのは通販でしたが、大きいウナギが人気であることに驚きを隠せませんでした。
ですが、大きな中国産ウナギに慣れ親しむ人が増えたこともあり、国産ウナギでも超特大として販売した所、見栄えがするとのことで大人気になりました。
一応、100尾以上おとりよせで国産ウナギに絞って購入してみましたが、『焼き上がりが120~150gぐらいが一番骨が気にならず、馬鹿みたいなサイズになると骨が気になり、脂っぽく、皮もご立派すぎました』。
200g前後ぐらいなら職人やメーカーの技術により、美味なものも数点ありましたが、片手で余裕で足りるぐらいですね。
ウナギのギフト利用時の注意
120~150gのサイズだとスーパーの長焼き鰻よりも下手したら小さいので、ギフトで高級ウナギを送った所、『大きくなくて、貧相ねぇ(笑)』と嫌味を言われた可愛そうな気の毒な方もいらっしゃるそうです。
ただし、ウナギの大きさは県によって評価が変わることもあるので、ギフトの利用を考えた場合は相手の出身地を知っておきましょう。
おとりよせのウナギは骨が気になる?
ウナギの小骨といえばウナギに欠かせない話題ですが、おとりよせだと骨が気になるものが実店舗よりも多かったのも事実です。
昔からある鰻屋で30~60分待ったものは骨が気になったことがありませんでしたが、スーパーで販売されているものとおとりよせでは骨に当たりやすかったですね。
その中でも特大・超特大(250~350gぐらい)になると大きな骨が多く、ちょっとやそっとの焼きでは骨が焼ききれないことが食感から伝わりました。
その点において中国産ウナギと国産ウナギの大きなウナギでは骨を覚悟する必要があります。
又、歩留まりを良くする為に焼きを甘くする傾向がある店もあったので、特大ウナギで焼きが甘いやつは地獄です。
その様なウナギの蒲焼でもアツアツにした上でグリルで焼けば多少は気になりづらくなります。
おとりよせウナギのまとめ
上記の内容をまとめると以下の様になります。
・機械製造はコッテリとしてやや身がしっかりとしている。
・手焼きの場合は店で食べている蒲焼と白焼きに近い。
・ウナギの美味しさは品種によるもは小さい。
・ウナギの美味しさは養殖方法が大きい。
・あまりに大きなウナギは選ばない方が無難。
・アツアツにし、グリルで焼く事でウナギの骨は多少気にならない。
基本的にはここまでの項目の情報さえ抑えておけば、好みのウナギを探すのは十分なので、管理人のオススメのウナギを次に紹介します。
ただし、今後のウナギの動向や知識などを万全にしたい人は最後まで読んでみてください。
調理師厳選のウナギ
手焼き/機械焼き/関西風 うなぎの兼光
手焼きと機械焼きの両方を取り扱っている珍しいメーカーでありながら、日本でも有名な三河一色産ウナギを使っているので、機械焼きの中でも値段が少々高めになっています。
しかし、200g前後のウナギがいずれも骨が気にならず、ウナギのしっかりとした身とたっぷりの脂を楽しむことが出来ます。
ウナギに載っている脂が写真からわかるぐらい残っているので、タレは強めになっており、ドッシリとした名古屋風の味です。
関西風の仕上がりになっているので、ひつまぶしとして食べるのがオススメです。
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【実食レシピ】芳ばしい蒲焼き【うなぎの兼光】
・新鮮な活鰻を捌いてすぐに調理している。
・関西風のウナギを2種類販売。
・サイズが立派であり、ウナギは非常に良質。続きを見る
機械焼き/関西風 うなぎ処鰻楽
乾燥グァバ葉を配合したエサで育てた「ハーブうなぎ」というブランドうなぎを自社で製造しており、ウナギの免疫力を高めると同時に脂のノリが良くなるそうです。
更に、ハーブを使うことでウナギ特有の臭味を軽減する効果があり、匂いに重点を置く人に好まれています。
ただし、その分、身の味が少し薄い様に感じたので、他の紹介しているウナギと比べると何処となく物足りない印象でした。
タレは塩気と甘味のバランスが取れた味わいになっており、たまりしょうゆを使うことで、ひと味違った醤油の風味を楽しめます。
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【実食/取寄】通販・実店舗共に大人気【鰻楽】
・ハーブをエサにして育てたウナギは臭みが少ない。
・取り扱っているウナギは全て国産。
・一貫生産体制を取っているので間違いが少ない。続きを見る
機械焼き/関西風 川口水産
関西風の焼き方をしているそうですが、印象として関西風と関東風の中間といった印象であり、関西風では脂が気になるが、関東風だと物足りないといった人にオススメです。
国産ウナギの中では比較的リーズナブルであり、刻みウナギやカットうなぎなどによってタレを使い分けているので、同じウナギでもタレが異なるので飽きにくいですね。
そして、何と言っても肝吸いへのこだわりが凄まじく、低温殺菌で調理したプリプリの肝は鰻屋で食べる中でもトップクラスの出来でした。
ウナギのおとりよせ界隈で信頼度と人気が高く、様々な用途で利用されています。
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【実食】川口水産の関西風鰻【蒲焼き、肝吸い、きざみ】
・市販品よりも品質が高く、少し安い関西風うなぎ。
・国産特大うなぎは肉厚で170g以上のボリュームがある。
・うなぎの形状が様々あり、用途に合わせて使える。続きを見る
手焼き/関東風 うなぎ処古賀
マツコの知らない世界で紹介された『日本一綺麗なうが重』を作る「うなぎ処古賀」は全て手作業で行われている伝統的な炭火で焼いた江戸前/関東風のウナギを存分に楽しめます。
店主は様々な老舗ウナギ屋で修行をし、伝統的な製法に則った手作業にて蒲焼を作っているので、鰻屋で食べるのと同じぐらいの金額にはなってしまいます。
ですが、見た目からして焼きムラが少ないことがわかり、口の中に入れると蒸されたことによる「フワッ」とした歯応えと共に、程よく落ちたウナギの脂が舌に広がります。
タレもサッパリとしており、ウナギ自体も高品質な物を使っている為、昔ながらの身の味を楽しめるウナギの蒲焼を求めるならこちらのメーカーは非常にオススメです。
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【実食】間違いない江戸前鰻の蒲焼【うなぎ処古賀】
・江戸時代から続く職人の技を家庭で楽しめる。
・全ての工程を手作業にて行っている。
・江戸前で妥協をしたくないのなら間違いない。続きを見る
手焼き/関東風 うなぎのたなか
こちらの写真だけはかなり前のものなのでクオリティが落ちています。
注文したのは関東風なのでカットうなぎでしたが、大型の長焼きも手焼きで作っているのが特筆すべき点でしょう。
ウナギのサイズが大きいのを好む人は一定数いますが、先述した通り大きくなると骨や皮などの問題が出てきます。
しかし、手作業で蒸しと焼きを行っている上に長めに調理をしている為、骨と皮が気になりにくい蒲焼に出来上がるので、関東風ウナギで見栄えがするのは嬉しがられるでしょう。
関東風らしくふっくら・トロリとしていますが、タレは手焼きウナギの中では比較的味が濃い部類になるので、「うなぎ処古賀」と雰囲気はかなり違います。
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【実食/取寄】関東風でふわとろ「浜名湖 うなぎのたなか」
・浜名湖の国産うなぎだけを取り扱っている。
・自宅でも名店の味に引けを取らないクオリティを楽しめる。
・老舗うなぎ屋による、ふわふわ・とろとろである関東風のウナギの蒲焼き。続きを見る
手焼き/機械焼き/関西風 みさら 満腹うなぎ
200g以上かつ30cm超えの大型ウナギでありながらも、職人の技術により、骨がほとんど気にならない大型ウナギの専門店です。
大きすぎるウナギはほとんどオススメ出来ないと先述しましたが、こちらの「満腹うなぎ」だけは太鼓判を押すことが可能なぐらいに高品質であり、骨がほとんど気になりませんでした。
炭火焼きと機械焼きの両方を取り扱っていますが、注文した炭火焼きは肉厚ながらもふんわりとした身には脂が程よく残っており、予算を決めないなら一番オススメです。
タレの味は甘味と醤油がしっかりとしている名古屋風ですが、厚みのある蒲焼には最適であり、商品名通り満腹になるまでご飯を食べてしまうぐらいです。
▼炭火焼きの肝焼きが注文可。
ウナギの肝焼きは1パックに約100gとたっぷり入っており、しっかりと下処理されているので嫌なニオイはせず、キュッとした歯応えが楽しめます。
味付けされていないのもポイントが高く、蒲焼のタレや塩などを少し付けて味わうことが出来るのが嬉しいですね。
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【実食】美味なる京都米【たかほのか/特別栽培米コシヒカリ】
・うな重や様々な丼に最適な米。
・スッキリとした味わいが素材を引き立てる。
・特別栽培米「京都丹後産コシヒカリ」。続きを見る
又、「みさら」で販売している「たかほのか」という特別栽培米はウナギとの相性が抜群であり、ウナギの質を1つ上げてくれる素晴らしい米でした。
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【実食/取寄】身は当然、肝まで極上【満腹うなぎ/みさら】
・200g以上かつ30cm超えの大型ウナギの蒲焼。
・大型専門の為、大型ウナギの焼き方を熟知。
・肝焼きをたっぷりと楽しめる。続きを見る
おとりよせウナギの総評
上記のウナギの蒲焼は好みさえ合っていれば美味しく食べられるウナギの蒲焼となります。
焼き具合を様々なメーカーごとに写真とはいえ並べてみると、見た目から脂の量やタレの濃度が伝わりやすいので、今まで食べて好きだったウナギの見た目を頭の中で思い出して、類似した商品を選ぶのが手っ取り早いでしょう。
現状では関東風なら「うなぎ処古賀」、関西風ならば「うなぎの兼光」「みさら」をオススメします。
ウナギの小骨・臭味の原因を知れば美味しく出来る
次の内容は『ウナギの小骨や生臭さ、皮の硬さなどが生じる理由』と『ほとんどのウナギを美味しく食べる方法』の2点になります。
こちらの知識を知っていればスーパーのウナギは勿論、ウナギのおとりよせをした際に、美味しく食べる事が出来ます。
ウナギの骨は焼きの工程である程度脆くなるが…
『鰻屋でせかすのは野暮。蒲焼が出てくるまで新香で酒を呑む』と定番のウナギ文言ですが、この野暮をお願いすると結果、骨が気になるウナギが出てきます。
骨が気になるうなぎは焼きが足りないと言われることがあり、身の旨味は残しつつ、骨を焼き切る見極めが大量生産では難しいのではないかというのが個人的な見解です。
なので、手焼きオンリーの店舗の方が骨は気にならない物が多く、値段の相場は4,000円前後と実店舗で食べるものと同じクラスになってしまいます。
その代わり、通好み…というよりはしっかりと焼くことで昔ながらの味わいになる為、脂っこいのが好きな人には物足りなく感じるかもしれません。
老舗の鰻屋ほど、良くある脂ギットリ鰻からは程遠く、鰻の写真を撮ってみると見た目はツヤ・テリが少なくなるので美味しそうではないかもしれません。
しかし、残念ながら実店舗かつ老舗でも骨が気になる時は稀にあるので、鰻の骨はある程度許容するしかありません。
又、産地・品種・大きさが一緒でも、生き物であれば骨の大きさが異なるので、一定数の内、何人かは割りを食うこともあります。
どうしても小骨が気になる人へ
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ウナギの骨が焼くことである程度気にならなくなるということがわかったと思いますが、ウナギの身肉に付いている骨は200以上もあるので100%除去するのは難しいでしょう。
しかし、その数値に近づく努力をしている鰻屋もあり、背開き・腹開きした後のウナギの骨をピンセットで外してしまうそうです。
手作業にて30分前後かかるので値段は跳ね上がりますが、「骨抜きうなぎ」は最後の砦となるかもしれません。
老舗である「鯉平」の製品が有名であり、年を召した方に人気があるそうです。
が、流石にコストパフォーマンが悪すぎるので管理人は試しておりません。
ウナギの気になる臭いと皮の硬さ
ウナギの天敵は小骨が最初に挙がると思いますが、嫌な臭いとゴムの様に硬い皮だったウナギも同様に敵です。
ゴムの様な皮をしているウナギの蒲焼/白焼きはおとりよせではほぼ見かけませんでしたが、スーパーで手に入る中国産/国産品では少なくない印象でした。
ウナギが臭い理由は主に焼き不足
ニホンウナギは少々濁った水を好む為、清流を好むヨーロッパウナギよりも泥臭い…と言われることもありますが、実はウナギの臭さに関しては焼き方が足りないウナギに多く発生します。
勿論、天然物に限っては環境に影響されることがあるそうですが、養殖鰻が99%以上占める現状においては、そこまで酷いウナギを作っていたら直ぐに噂になって倒産してしまいます。
おとりよせサイトなのでかなり省略しますが、結論からいうと臭いウナギを焼き直すことで問題を解消出来ました。
色々とやってみましたが、焼きが甘いウナギや温度が低いウナギでは臭味だけではなく、小骨や皮も気になってしまいました。
ニオイの原因は皮にあるコラーゲンと脂肪
主に臭み成分は脂肪や皮膚に蓄積されるのですが、コラーゲンが豊富なウナギはじっくりと火をいれないと普通の魚と違って生焼けになり、揮発性物質(蒸発すると空気中に散る)であるニオイ成分が抜けません。
なので、蒸すことにより、短時間で脂を抜くと同時に身や皮を柔らかく出来る関東風ウナギが大量生産では採用されることが多く、効率的であることから関西圏でも関東風が増えてきたのだと考えられます。
今回紹介する店舗では臭いウナギを出すヤバイ店舗は当然除外していますが、その様なウナギを購入してしまった場合には焼き直しましょう(方法は後述)。
ウナギと調理
http://shirayaki.web.fc2.com/kusami.html
ウナギの皮が硬い理由
身をよじりながら泳ぐウナギは表皮の伸縮が激しい為、皮に含まれているタンパク質であるコラーゲンの密度が非常に濃くなっています。
ウナギをじっくりと焼くのにはこの理由が大きく、強火で調理した場合にはこの皮の筋繊維がほぐれきれずにゴムの様な食感が残ったままになってしまいます。
イメージとしては牛すじや豚バラ肉を調理する際にサッと茹でただけでは食べれないのと一緒ですね。。
4、5年と色々なウナギを試してみましたが、よほど大きなサイズのウナギか中国産以外では皮が硬いものには当たりませんでした。
全てのウナギを改良する方法
今まで記述してきた内容をまとめれば、『火の通し方が甘い』ということになります。
つまり、ウナギの加熱方法さえ知っておけば常に美味しいウナギを楽しめます。
とりあえず、ウナギの蒲焼の味を良くするとされている手法を知っている限り記載してみます。
1. フライパンで酒をふって酒蒸し。
2. 流水でタレを取り除き、焼き直す。
3. 緑茶で煮てから、焼き直す。
4. 解凍してからグリル/オーブンなどで焼く。
5. 圧力鍋で煮る。
緑茶で煮る理由としては茶葉に含まれているカテキンがウナギの皮に含まれるコラーゲンを柔らかく…するらしいですが、微量なカテキンが作用するのはちょっと考えづらい気がします。
個人的な結論としては、まずはメーカーの記述通りの食べ方を行い、臭みを感じた場合には以下の方法をオススメします。
オススメの調理方法
1. 沸騰した湯で冷凍ウナギを3~5分湯煎する。
2. 日本酒をウナギの全面に軽く振りかける。
3. グリルにて弱火で焼く。
4. ブツブツと泡が出てきてから暫く焼く。
5. 焼き目がしっかり付いたら完成。
臭みがなくともグリルで焼くと大抵のウナギが美味しくなりますが、臭みが無い場合には強火で加熱し、ブツブツと泡が出てきた瞬間に止めた方が脂と身の旨味を逃しません。
タレは自作の方が美味いこともある
紹介したもので『ここのタレがマズイ!』というメーカーはありませんでしたが、タレと焼き方はメーカーによってかなり雰囲気が違うので、一発勝負である普通の消費者ならば万が一の手法もあることを覚えておくと良いのかも知れません。
実は市販で販売している蒲焼のタレは大抵が醤油・砂糖(上白糖or氷砂糖)・味醂だけで作られているので、自作でも対して変わりません。
個人的に使用しているタレのレシピ
濃口 100cc
味醂 80cc
日本酒 20cc
砂糖 20g(要調整)
作り方
1. 味醂と日本酒を合わせ、強火で煮切る。
2. アルコールが飛んだら焦がさない様に半分ほど煮詰める。
3. 醤油を注ぎ、弱火で加熱する(鍋のフチに泡が軽く出る程度)。
4. 全体量が100cc前後になったら砂糖を入れる。
5. 砂糖が溶けたら完成。
ウナギの頭や骨から出汁を取った上で、上記の調味料で作ればを加えれ鰻屋と一緒のタレになりますが、実際に手に入れるのは手間なので忘れても構いません。
ウナギの品種と養殖による情報
実はウナギの味に大きく影響するのは養殖技術と調理技術の為、品種による味の差は僅かとなっています。
しかし、ニホンウナギの値段が高い理由や外国産ウナギについての理解度を深めれば、今後、様々なウナギから選ぶ方法が増えると思います。
食用ウナギの品種は主に3種類
ニホンウナギ/アンギラ・ジャポニカ(後ろは学名)
体調80cm前後、体に模様も色も地味と日本らしい奥ゆかしさをもっており、日本で長年親しまれているウナギとなっています。
ニホンウナギと言われていますが、ニホンウナギは中国や台湾などでも採苗することが出来、国家間で漁獲制限を設けていても日本だけではなく、中国や台湾でも密漁が絶えないのが現実です。
当然ながら希少な品種であり、シラスウナギ(ウナギの稚魚)の価格は直近10年の平均値としては1kg150万円です(一匹の重さ約0.2g)。
2000年には10万~70万だったのが、これだけ値上がりしてしまえば2,000~3,000円で食べられたウナギが4,000円以上になるのは仕方ありませんね。
ヨーロッパウナギ/アンギラ・アンギラ
50cm前後と日本ウナギよりも短い分、やや肉厚になっており、かつてからチェーン店で出てくるウナギの蒲焼は大抵がこちらの品種となっています。
ユーラシア大陸西武、アフリカ大陸北部、北アメリカ大陸大西洋に住んでおり、ヨーロッパ産シラスウナギを中国で養殖し、加工・活魚として輸入されてきます。
捌いたものの見分け方としては身が厚く、幅が広くなっているので、長焼きの状態ならニホンウナギと違うことが一見でわかるはずです。
脂が強い事が多いのは養殖の歩留まりをよくする為に肥満体質気味なのが原因であり、品種によるものでは無いと言われています。
しかし、上記の点からか、鰻の香りや旨味はやや弱いので、タレと脂の組み合わせを楽しみたい人に喜ばれています。
ビカーラウナギ/ビカーラ種
東南アジア、アフリカ大陸東岸、オーストラリア北部などと生息地が幅広く、2012~2013年にかけてニホンウナギの稚魚が少なかった時から国内養殖の対象となったものです。
2014年度以降にはほとんど見かけることがなくなりましたが、日本の従来の養殖方法とは相性が悪く、『やっぱり、ニホンウナギだな』という評価をされてしまい、ほとんどの業者は使わなくなってしまいました。
しかし、現在でもこちらのウナギの養殖に力を入れているメーカーが各地に少なからずとも存在しており、研究の結果、知名度では劣るものの、他のウナギに劣らない美味しさになりました。
ニホンウナギよりは香りが少し弱いと言われていますが、それも養殖技術によって解決されてきており、中国産ウナギの輸入量がガクッと落ちてきている現在、これから台頭してくる品種でしょう。
ビカーラ種のブランドウナギ
能登うなぎ(石川)、神戸美人うなぎ(兵庫)、温泉うなぎ(大分)、福うなぎ(福島)など
うなぎの育て方は大まかに2種類
味には一切関係ない話になりますが、中国産が薬品を使う印象がある反面、日本では何故、その様な噂が話に上がらず、安心・安全と言えるのかここの内容でわかります。
① ビニールハウス型プール
うなぎを卵から育てることは難しく、ウナギの稚魚であるシラスウナギを種苗(捕獲)し、養鰻場で蓄養を行います。
日本の養鰻場は大きなプールにビニールハウスを被せ、ウナギの養殖に適した28℃前後の水温に保ちます。
何故、この温度を維持し続ける必要があるかというとウナギは本来、冬眠する生物であり、冬眠している間はエネルギーを消耗するだけで生育しません。
なので、冬眠をさせずに肥育し続ける目的の為に温度を保つ必要がある訳です。
病気が発生した場合には水温を33℃前後に上げることで殺菌することが可能なのも、ビニールハウス型のメリットであり、抗生物質や薬などを極力使わずに済みます。
日本ではウナギとの付き合いが長いことから、大きめのサイズよりも食べて美味しいサイズに生育させることが多く、6カ月から18ヶ月ほどかけます。
温度を保つ為のガス代、人件費、ニホンウナギのシラスが高価でありながらも歩留まりが悪い早めの出荷を行っている為、値段が高くなるのも当然ですね。
② 路地池
稲作農業などでイメージのある水田に似たものを地面に作り、そこに水を貯めてウナギを育てる養殖方法であり、中国ではこちらを主に採用しています。
かつて、日本でも路地池栽培を行っていましたが、温度変化に弱く、病気になった際に抗生物質や薬品などを使わざるをえなかったので、現在ではほとんど採用されていません。
それでは何故、中国では未だにこちらの手法を取っているかというと、鰻の養殖に適した高温地域が存在しているからです。
日本と違い、コストがかからない養殖方法を取ることが可能な点から24~36ヶ月ぐらいの生育期間で歩留まりを良くしてから出荷します。
重さが国産の倍近くあり、ガス代がかからないことを考えれば、日本の鰻が中国産と比べて高価になることは想像に容易いことだと思います。
様々な国のウナギ情報
輸入ウナギといえば中国産や台湾産のイメージが強いですが、インドネシア産やフィリピン産なども登場しています。
ここでは主に食用とされている国産ウナギと海外産ウナギの産地の情報を併せて紹介していきます。
日本産 天然 ニホンウナギのみ
昔は選別することが出来ましたが、需要と消費量に対して匹数が圧倒的に足りない為、かなり値上がりしてしまいました。
希少価値も相まって、国産養殖と比べて3倍以上の価格をしており、尚且つ、味が安定しないので現在、選ぶ意味は高級料亭や天然物信仰をしている人用ですね。
日本産 養殖 ニホンウナギ/ヨーロッパウナギ/ビカーラウナギ
国内で一番多いウナギはニホンウナギだと言われていますが、食用ウナギの全ての品種が養殖されています。
天然国産と違い、養殖方法と調理技術しだいで味は決まる上、国内生産量の99%が養殖ウナギの為、しっかりとしたメーカーさえ選べば安定した味を楽しむことが出来ます。
中国産 養殖 ニホンウナギ/ヨーロッパウナギ
ニホンウナギというと日本しかいないと思われていますが、中国・台湾でも取ることが出来る東アジア固有のウナギです。
ですが、主役はどちらかというとヨーロッパウナギの方が主流であり、いずれの品種も路地池で栽培されています。
日本に輸出する為に中国が目をつけたのが始まりでしたが、今では国内消費の方が輸出を圧倒的に上回っており、中国産ですら高級になる日は既に近づいています。
台湾産 養殖 ニホンウナギ
日本人が現地指導をしながら養殖しているパターンが多い様です。
2021年の情報になりますが、輸入されている比率でいうと中国産:台湾産=3:1ぐらいであり、活鰻で入っているのが年間7,000㌧ぐらいです。
加工ウナギが99%中国産で16,000㌧に対し、台湾産はほぼ100%活鰻でしか輸入していません。
加工うなぎでない分、台湾産の活鰻は品質が高いとされており、物によっては国産養殖のウナギと同じぐらいと言われています。
フィリピン産 養殖 ビカーラウナギのみ
ウナギを食べる習慣がなかったそうですが、日本が色々な所で中国に代わる生産地を模索した結果、フィリピンやインドネシアでもウナギを食べる人がチラホラいるほどになったそうです。
ウナギ自体は水源がキレイなことと日本人が指導している為、それなりの品質の鰻が出来ているらしいですが、フィリピン産ウナギは未だに食したことがありません。
シラスウナギからある程度の大きさまで生育し、活鰻として販売している日本企業もあります。
インドネシア産 養殖 ピカーラウナギのみ
インドネシアではビカーラウナギの稚魚が豊富におり、採苗したものを日本と同じビニールハウス型プールで育てています。
近年、イオンがニホンウナギの販売を完全撤廃し、インドネシア産のピカーラウナギを輸入し、比較的定着してきました。
フィリピンよりも更に立地が悪いインドネシアでは現地による養殖から加工工場までを全て一社で行っており、完成した蒲焼は冷凍して日本に届けられます。
参考:日本鰻輸入組合
http://www.unagi-ia.jp/
中国産のウナギについての情報
2005年に中国産ウナギからマライカトグリーンという劇薬である合成抗菌剤が日本の検査機関によって発見されたことがあったことを覚えている人は多数いるでしょう。
それ以降にも数こそは多くないものの上記の薬や違反薬品が検出され、中国産ウナギ/台湾産ウナギはそれでも中々なくなりませんでした。
その事から中国と日本で各国ごとに厳しい検査をされる様になりましたが、弾かれた場合には1年以上の輸出が不可能になり、返品されるリスクもある為、輸出不可は実質倒産と同義語となります。
なので、現在では年々検査が厳しくなっている為、99%は安全な食品となったと言えるかもしれませんが、1円でも安く買えるウナギを求めて中国産を仕入れてしまう日本企業から入り込まないとは言い切れません。
先述した様に中国でのウナギ消費量の高まりは、中国市場にターゲットをシフトし、輸出を減らすことで高品質な製品づくりをしない生産システムを維持する方法なのかもしれませんね。
2022年には中国人の1,000万人近くが月1回以上食べる程になり、中国のウナギ消費量が日本を超える様になりました。
そのことからスーパーに中国産ウナギを見かけなくなった人も増えたと思います。
本記事の参考文献(順不同)
日本養鰻漁業協同組合連合会
http://www.wbs.ne.jp/bt/nichimanren/rekisi.html
浜名湖産直マーケット
https://www.8075.jp/read/topics/1158/
ウナギと調理
http://shirayaki.web.fc2.com/kusami.html
日本鰻輸入組合
http://www.unagi-ia.jp/
総括
まずは、最後までこの様な長い記事を読んでくださった方、ありがとうございました。
日本では土用の丑の日にかなりの家庭でウナギの蒲焼を食べる文化が今でも継承されていますが、実はほとんどの人が土用の丑の日以外に食べていません。
そのこともあり、ウナギに対する理解度というものは思いの外低いのが現実であり、資源枯渇が心配されている割にはスーパーやコンビニなどで販売されているウナギの廃棄量が非常に高いのが個人的に残念です。
恒例行事として何となく買って食べることが多い日本では、子供や若い世代にとっては『ウナギはこんなもん』と思われてしまってるのが現状なので、偶には鰻屋にいって炭火焼きのウナギを家族で楽しんでください(おとりよせブログでこういうことを書くのも微妙ですが笑)。
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・ハーブをエサにして育てたウナギは臭みが少ない。
・取り扱っているウナギは全て国産。
・一貫生産体制を取っているので間違いが少ない。続きを見る
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【実食】川口水産の関西風鰻【蒲焼き、肝吸い、きざみ】
・市販品よりも品質が高く、少し安い関西風うなぎ。
・国産特大うなぎは肉厚で170g以上のボリュームがある。
・うなぎの形状が様々あり、用途に合わせて使える。続きを見る
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【実食】間違いない江戸前鰻の蒲焼【うなぎ処古賀】
・江戸時代から続く職人の技を家庭で楽しめる。
・全ての工程を手作業にて行っている。
・江戸前で妥協をしたくないのなら間違いない。続きを見る
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【実食/取寄】関東風でふわとろ「浜名湖 うなぎのたなか」
・浜名湖の国産うなぎだけを取り扱っている。
・自宅でも名店の味に引けを取らないクオリティを楽しめる。
・老舗うなぎ屋による、ふわふわ・とろとろである関東風のウナギの蒲焼き。続きを見る