本レシピのポイント
・大抵の刺身に合う様にクセがないバランスに仕上げている。
・刺身以外にも仕上げに使う醤油として美味しい。
・好みの塩分に調整出来る。
・アレンジに使える素材をまとめてある。
寿司屋の醤油とは?
「寿司屋の醤油」はいわゆる「煮切り醤油」と言われるもので酒や味醂、出汁などを加えて濃口醤油を煮詰めたものです。
レシピには決まりは無いですが、濃口醤油を加熱するという点は恐らく共通点となっています。
レシピを紹介する前にたまり醤油と再仕込み醤油の特徴を理解しておくと、後々のアレンジに何を足すと美味しく出来るのか理解が深まると思うので記しておきます。
たまり醤油の特徴
東海三県(愛知、岐阜、三重)で主に作られており、トロリとした醤油には旨味・風味・色が濃口醤油よりも強めになっているのが特徴です。
使い道は刺身や寿司、照り焼き、佃煮などが主に使われていますが、様々な料理に使っても問題ありません。
通常の醤油は大豆と小麦が半分の割合で作られますが、たまり醤油は小麦を使わないかごく少量しか使わないので小麦アレルギーの人にも日常的に使える醤油として重宝されています。
本来のたまり醤油は豆味噌から絞ったものや上澄みのことでしたが、現在販売されているたまり醤油は定義があやふやになっています。
例を挙げると、水分量を減らして濃厚に作られた濃口醤油や甘味料でとろみをつけたもの、小麦粉を使っていないだけの醤油など、様々なものがあります。
これらの理由としては本来の作り方であるたまり醤油はコストパフォーマンスが悪いという点と品質の保持が難しいという点が考えられます。
又、たまり醤油というネームバリューによる商品の価値を高めるためということもあり得るので商品選びには気をつけましょう。
再仕込み醤油の特徴
さしみ醤油や甘露醤油とも呼ばれており、風味と色が濃厚になっており、たまり醤油と同様に刺身や寿司などに使われます。
濃口醤油を作る工程では塩水を使うところ、再仕込み醤油では名の通り、生醤油や醤油など(主に淡口醤油)を用いて仕込むので旨味が増えます。
値段による差は主に熟成年数と原材料によるもので、再仕込みという製法を取っていることはほぼ間違いありません。
たまり醤油にも言えますが、再仕込み醤油もそれなりにお金を出さないと美味しいものが買えないのは欠点ですね。
レシピ
濃口醤油 300cc
日本酒(中身は白鶴 まる) 200cc
枯れ節(かつおぶし削り節) 1g
梅干し 1個
材料選びのポイントはそれなりに良い醤油を用いることと「枯れ節」を削った「かつおぶし削り節」を用いることです。
一般的に花かつおや厚削り節として安く販売されているのは「荒節」を削った「かつお削り節」になります。
今回紹介する記事とは方向性が違うので詳しく説明をしませんが、「荒節」は魚の香りが強く、燻される工程により独特の香ばしさを持っていますが、旨味は「枯れ節」よりも控えめになっています。
一方、枯れ節は一般的に想像する鰹節であり、「荒節」に数回カビ付けして熟成させたもので、香りは穏やかで純粋な旨味が強いのが特徴です。
「荒節」は刺身には香りが強すぎるので、出来れば「枯れ節」をオススメしますが、家庭で枯れ節を使わないことも多いので、花かつおや食べる削り節などで代用しても構いません。
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【実食】良品が多い、「福梅本舗」のお試しセット
・塩分濃度や味付けが様々あり、好みの味を探すことが出来る。
・紀州南高梅の中でも最高級のものを使用しており、更に福梅本舗の職人が選別している。
・フランスのホテルでも使われている。続きを見る
梅干しに関しては家庭にある梅干しを使うだけでいいのですが、塩分濃度が高い梅干しかつ、余計なもの(赤しそやアミノ酸など)が入っていないものがベストです。
減塩タイプ(塩分濃度10%前後)のはちみつ入り梅干しが近年では圧倒的な人気を誇っていますが、刺身用に使う醤油なので出来れば入っていない方が様々な魚に合います。
今回は「福梅本舗」の塩分濃度21%の梅干しを使用しています。
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最高の素材による芳醇さ「梅仙人の白梅干」【福梅本舗】
・最高級の紀州南高梅を使った昔ながらのしょっぱい梅干し。
・梅仙人と呼ばれている職人によるこだわりの一品。
・料理に使う梅干しは塩分濃度が高い方が美味しい。続きを見る
作り方
1.削り節を計量する。
2.日本酒のアルコールを飛ばす。
管理人はアルコールを飛ばす時はフランベで確認しており、フランベの炎が消えたらアルコールが飛んだことにしています。
3.軽く潰した梅と枯れ節を入れ、弱火で2分煮る。
梅の味が出やすいように指先で軽く潰しますが、この時に種は取ってしまいましょう。
4.濃口醤油を注ぎ、弱火で煮ていく。
煮る時間に関しては使用する鍋やコンロによって大きく変わってしまうので明記できませんが、煮詰めたあとの分量が濃口醤油の元の量になるぐらい煮詰めます。
焦がしてしまうと刺身用には到底使えない代物になってしまうので、その場合には焼き物に使います。
5.濾し器を使い、梅と枯れ節を取り除く。
最後にスプーンの後ろなどを使って醤油を絞り出しますが、強くやりすぎると梅の破片や鰹節の欠片が入るので注意しましょう。
この時にビーカーなどを利用して計量すると、どれぐらい蒸発させられたかわかりやすいです。
6.出来上がったものを醤油差しに移す。
完成品
当然のことですが、醤油を焦がす訳でも色が付く素材を使っているわけではないので濃口醤油と見た目は変わりません(笑)。
生醤油と比べると風味が穏やかになり、まろやかな味わいになった上、枯れ節のほんのりとした香りと隠し味である梅の爽やかさが加わります。
日本酒を煮詰めるとほのかな甘味と旨味を作り出し、砂糖とは違った奥深さを出してくれますが、たまり醤油ほど強くないのでいずれの刺身にも合ってくれます。
▼刺身をヅケにする場合にはこの醤油だけでOK。
このレシピは煎り酒と濃口醤油を混ぜている寿司屋のことを思い出し、実際に作ってみた所、今まで作った煮切り醤油の中でも1番万能だったので紹介しました。
刺身の他には卵かけご飯や冷奴などの醤油が主張しやすい料理に使ってみると味の違いがわかりやすいですね。
アレンジのコツ
基本的には上記の割合が万能なのですが、家庭により好みは様々です。
そこで、家庭にあると考えられる素材を中心にまとめておきます。
使い勝手の良いオススメ素材
本味醂
寿司屋でも本味醂を使うところは多いらしく、本味醂に含まれるデキストリンがトロミの役割を果たし、適度な甘味をプラスすることが出来ます。
たまり醤油の甘さやトロミが好きな人には最適な調味料であり、酒と同時に煮きり味醂にして使いましょう。
みりん風調味料を使うとせっかく作った煮切り醤油が台無しになることが考えられるので避けてください。
砂糖
本味醂ほどではないですが甘味料なので似た働きが期待出来、家庭に本味醂がない場合には日本酒と混ぜることで代用品を作ることが可能です。
上白糖や赤砂糖、ざらめ、黒糖などにより味が変わるので、手軽でありながらも味を変えやすい便利な調味料ですね。
昆布
醤油・鰹節・昆布の旨味3種の神器と言っていい組み合わせで、旨味がかなり補強されます。
昆布の独特な香りが刺身の味や香りを邪魔することがありますが、うまく調整すれば匂いは軽減できます。
塩気と旨味を強める素材
淡口醤油(うすくち醤油)
最近の濃口醤油は昔の濃い口醤油と比べると塩分濃度が薄くなっており、ちょっと塩気を足したいという人にオススメです。
再仕込み醤油は淡口醤油を塩水の代わりに使うことが多いので、近い味わいを出せるかもしれません。
老舗の蕎麦屋ではそばつゆに塩分を足す時に使うテクニックであり、香りを付けずに旨味を増やせます。
白だし
市販の白だしを少しだけ入れると複合的な旨味が加わり、淡口醤油と同様の働きを行います。
ただし、塩分濃度はかなり高く、好みの味に仕上げるには少々研究が必要です。
香りに難があるが味を複雑に出来る素材
干ししいたけ
干したしいたけにはグアニル酸という旨味が豊富であり、和食や中華では出番の多い乾物です。
デメリットとしてはしいたけの香気成分であるレンチオニンが独特な香りなので、繊細な香りを邪魔します。
様々な魚の乾物
アゴやマグロ節、ニボシなどは煮切り醤油には強すぎる素材とも言えますが、地方によって香りの好みは大きく異なるので、選択肢の1つとしては考えられます。
「作るのが面倒!」と思った人向け
料理の片手間で作れる調味料なので、そこまで手間が掛からないと管理人は考えていますが、人によって感覚は様々です。
そこで、簡易的な煮きり醤油の作り方を記載しておきます。
『小さじ1の日本酒のアルコールを飛ばし、そこに濃口醤油を大さじ1入れて火を止める。』
これだけでパック寿司といえども、そこそこの回転寿司ぐらいのレベルにはなる・・・かもしれません(笑)。
煮きり醤油はコストパフォーマンスが最高
様々な煮きり醤油が寿司屋では作られていますが、相当な高級素材を使ったとしても本格的な再仕込み醤油やたまり醤油と比べれば圧倒的にコストパフォーマンスにおいて優れています。
今回紹介したレシピも実質、普段使っている醤油に煮詰めた日本酒を混ぜているだけですからね(笑)。
煮切り醤油は日持ちに関しては生醤油よりも落ちますが(実経験では1ヶ月も保たないですね)、醤油を直接かける料理の味を向上させてくれるので是非作ってみてください。